想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

漱石、動と静のあいだ

2009-11-26 16:56:47 | 
端粛(タンシュク)。
「人間の活力の動かんとして、いまだ動かざる姿と思う」、
それがもっとも美しい理想の姿である(ギリシア彫刻において)という。
漱石の「草枕」の中で画工がのたもうているのであるが、その説明を
つらつら読み進んで、かならず膝を打ちたくなる。
合点がいく。
だよね~と言いたくなる。

「動と名のつくものは必ず卑しい。運慶の仁王も北斎の漫画も
全くこの動の一字で失敗している。動か静か。」(「草枕」)
この二行の前にある数行に合点がいくのである。
だから動でも静でも悪くはないが、動なら動の、静なら静の定まった
ところの責任というかすでに背負ったものを引き受けねばならんと
いう、そういうあたりまえなんだけど、意外にやっちまったなあ的に
陥る平凡を突いている、そこが漱石の神経症的な笑いである。

白黒、善し悪し、行く行かぬ、二つのどちらかに急ぎ断ずることが
美徳ではないというのである。
表面にあらわれるそれらの結果の裏側に秘された「アワイ」を
瞬時にきりとる才を霊能というのではないか。

霊しき、それそのものは「アワイ」に満ちて、そこからどうかわり
(易り)定まるかは瞬く間のことである。
きりとったそれを画面に白紙に乗せるのは、心の技であるから、
迷うことや、待つことを厭う健康なる凡人には観ることが難しい。
画工の話は現実の女人のことに及んでいくのであるが、物語のそれ
よりも行間にのぞく漱石の思索が面白くてならない。

漱石の孫である半藤末利子さんの著書「漱石の長襦袢」が出たので、
時間があるときの楽しみメモにしてある。まだ手元にないのだけれど
すでに読んだ気分なのが変だ。旅先に行く前から行った気になって
楽しいのに似ているな。

(半藤末利子さんは昭和史物を描けばこの人をおいてなしの作家、
半藤一利氏夫人、前作に「夏目家の福猫」「夏目家の糠みそ」)



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オヤジになっても

2009-11-26 05:50:44 | Weblog
チビだった頃の親分、お尻も小さい、あんよも小さい(けど太い)。
からだ全体に比べて頭が大きかった。バランスがとれないからよく転んだ。
テントを張って篠竹と雑草と大木の根っこと闘いつつ造成作業をしていた頃、生後二ヶ月を少し
過ぎたくらいの頃である。
ちょろちょろして危ないのでつないでおく。長い長いロープにリードの輪っかを通して移動距離を
長くしてくれたのはカメ、おかげでそばを通る人をロープの端まで追いかけることができる。
それ以上ついていけないところまでくるとキャンキャンとないた。
現在のウーファー音とは想像もつかない、まだ可愛い声だった。

この頃の写真が数枚しかない。デジカメはまだ業務用であったし、最初のサイバーショットを
手に入れる前年、インスタントカメラで撮った一枚だと思う。ハハ的には育てるのに必死で
写真を撮る余裕などなかったというのが正直なところ。まだ体重7キロで抱っこして歩けた。
ほんとに可愛くて、駐車場から事務所までの道200メートル弱を抱っこして通っていたら、
通りの途中にある本屋のオヤジがほどなくしてラブラドールの子犬を飼うようになった。
(おまけに名前はベイブ、時代を感じるでしょ。そっちはイエローのラブ)
すれ違うOLさんたちに「きゃー、かわゆ~い」と声をかけられ、わたしの腕の中から愛想を
振りまいていたベイビーであった。



体重40キロ弱に変貌するのにそう時間はかからなかった。マッチョだからギュウギュウである。
サーファー御用達ショップのTシャツ。当時、松たか子が愛用しているのよ、と言っていただいた。
元々色落ちさせた渋い色だったのが年季が入って、親分の小雨の日散歩用になって、そろそろ親分の
足ふき雑巾へお下がりなので、着納め。



トド化する日々、このごろは自分で枕(カピパラのぬいぐるみ)をして寝るのがお気に入りだ。
寝こむと外れる。朝はそれをくわえて、わたしのベッドへ起こしにやってくる。
よだれまみれのカピバラをつきつけられ、笑いながら目覚める。



遊びに来たM子にピタっとひっついてトロケそうな顔をしている。チビの頃からの仲だ。
ずっとここから動かないんだからもう、なんちゅうことなの!
話し込んでるM子の肩、髪などに鼻先をつけてビミョーな表情をしている。おっかあから
見られているのもなんのそのの恍惚ぶり。「お姉さん好き」の三つ子の魂は変わらない。

でもな、言うとくけどな、ピチピチMちゃんもつまりいい歳になっとるんよ、あーたがオヤジに
なったんだからM子だっていつまでもツルツルのOLさんやないよ、今じゃアラフォーの、
バリバリの働く女の人なんよ。ついでにお一人様なんよ。

その、最後の要らないんじゃないっすかとM子がツッコむが、それでも離れないんだね~。
いい匂いがするってか。ボクがいるじゃないっすか、と言ってる目。
お一人様歴を更新中であるM子は、君に惚れられてもなあと複雑な笑い。



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