旅の最後に飯の話。
うさこの饅頭好きを知らずして友と名乗るはモグリであると常々言いふらして
あちこちの饅頭を手に入れ、その姿も日に日に饅頭化して大いに反省している
このごろであるが、カメよりたびたび聞いている天ぷらまんじゅうなるものを
食する機会がとうとう巡ってきた。
強清水、こわしみずと読み全国あちこちにこの名の土地がある。湧水のある処
を指しているのかと思うが、ここは猪苗代湖から会津へ向かう途中の国道から
少しそれたところだ。湧水のそばに蕎麦屋。なんと説得力のあることか。
いい水があるところで蕎麦を打って、おまけに饅頭を味方につけて最強である。
名前も強清水、元祖清水屋。
注文を取りにきたアネサンが、すごいきれいなおばちゃんであった。
昔は舞台女優だったのよ~今は蕎麦屋でバイトしてるけど~とは言わなかったけど
言われたら信じてしまいそうな美貌に見とれながら「て、天ぷらまんじゅう蕎麦
ください」と言ったら、「ないよ~」と返された。
「そばと別に天ぷら取ってくださ~い」と顔に似合わず早口で言って去ってゆく。
メニューをよくよく読んで確かめると、ない。天ぷらまんじゅうはあるが、蕎麦に
天ぷらが乗っている写真はないのである。
言われた通りに注文して、うさこは揚げた饅頭をさっそく熱いかけ蕎麦の上に
乗せた。そしてフーフーしながら食べようとしたのだが、これがムリ。
考えればわかることなのだろうが、考えないのである。饅頭のことだもの、
考えたりはしない。結果、饅頭のアンコは蕩けて蕎麦つゆにどんどん一体化して
いくのであった。
キレイなおばちゃん、いやアネサンがやってきたので「ざる一枚ください」と
頼み直して、旨そうな蕎麦屋で食する時の王道、冷たい蕎麦に切り替えた。
天ぷらまんじゅうはおかずにしてつゆにつけながら食べるんだそうである。
先に言ってくれよと思ったが、最初から乗っていると思い込んでいたうさこの
はやとちりであった。
とても美味しい、びっくりするくらい美味しい蕎麦、でもなんだか当たり前の
ようにも思ったりした。だって湧水を囲んで数軒蕎麦屋が建っていて、これが
みな古びていて、むかーしからここで商売やってんのよ、悪い?ってな雰囲気
で堂々としている。悪くない悪くない、ぜんぜんいいですと聞かれもしないのに
言いながら湧水を汲んで味見をした。
水はうちの天然水と似た味で、やわらかなやさしい水。日本の森の樹々と土に
抱かれた水って感じでした。ベイビーがごくごく飲んだからマチガイない。
(彼は美味しい水のみ慣れてしまってPAの水道水を汲んであげても首を横に振る
犬なのである)
水汲み場でも先に来ていた若いあんちゃんに「水、直接それ入れたらダメです」
と何もアクションしてないのに言われた。500mlのペットボトルを手にして
突っ立っているうさこのマヌケっぷりを見抜いて思わず口にしたのであろうと
推察し、す、すみませんと謝ってしまう。
そしてこのようなときにうさこはすぐに続けてほんとに知らないフリをして
しまうのである。「どうやって汲めばいいの?」なんて聞いたりしちゃって。
そんなこと見りゃわかるのであるが、これは一応尋ねておこうという気にさせる
真剣なまなざしのあんちゃんなのであった。
ひしゃくと漏斗が置いてあるのでそれを使用せよ、ってなことをあんちゃんは
指差しながらキッパリと言って立ち去ったけど、見送っていたらバイカーだった。
バイカーには隠れ温泉とか天然水の在処とかに詳しい人がいると知っていたが、
ひょろっとした青年と天然水とバイクは妙に似合っていなくて、かつリアルで
よかった。
ぜんたいに、のどかな雰囲気の一角に立って、ここはなんかいいぞーと思った。
国道沿いは大内宿へと向かう車で土日混雑し、どこの田舎も同じな風景になって
趣向にかけてつまらないと思いつつ走ってきたが‥。
ちょっと道をそれてみるとそこはそこの生活感があり、通りすがりのヨソモンには
関係ない時間が流れているのであった。
茶店が肩を寄せ合うように並ぶ路地であるのに、媚びた感じがまったくなかった。
変に田舎を売り物にしてツッパってもいないし、あのキレイなアネさんが
「食べたいなら食べなさーい、来たいなら来なさーい」とちょっと訛りながら
言う声が聴こえる気がした。
うさこの饅頭好きを知らずして友と名乗るはモグリであると常々言いふらして
あちこちの饅頭を手に入れ、その姿も日に日に饅頭化して大いに反省している
このごろであるが、カメよりたびたび聞いている天ぷらまんじゅうなるものを
食する機会がとうとう巡ってきた。
強清水、こわしみずと読み全国あちこちにこの名の土地がある。湧水のある処
を指しているのかと思うが、ここは猪苗代湖から会津へ向かう途中の国道から
少しそれたところだ。湧水のそばに蕎麦屋。なんと説得力のあることか。
いい水があるところで蕎麦を打って、おまけに饅頭を味方につけて最強である。
名前も強清水、元祖清水屋。
注文を取りにきたアネサンが、すごいきれいなおばちゃんであった。
昔は舞台女優だったのよ~今は蕎麦屋でバイトしてるけど~とは言わなかったけど
言われたら信じてしまいそうな美貌に見とれながら「て、天ぷらまんじゅう蕎麦
ください」と言ったら、「ないよ~」と返された。
「そばと別に天ぷら取ってくださ~い」と顔に似合わず早口で言って去ってゆく。
メニューをよくよく読んで確かめると、ない。天ぷらまんじゅうはあるが、蕎麦に
天ぷらが乗っている写真はないのである。
言われた通りに注文して、うさこは揚げた饅頭をさっそく熱いかけ蕎麦の上に
乗せた。そしてフーフーしながら食べようとしたのだが、これがムリ。
考えればわかることなのだろうが、考えないのである。饅頭のことだもの、
考えたりはしない。結果、饅頭のアンコは蕩けて蕎麦つゆにどんどん一体化して
いくのであった。
キレイなおばちゃん、いやアネサンがやってきたので「ざる一枚ください」と
頼み直して、旨そうな蕎麦屋で食する時の王道、冷たい蕎麦に切り替えた。
天ぷらまんじゅうはおかずにしてつゆにつけながら食べるんだそうである。
先に言ってくれよと思ったが、最初から乗っていると思い込んでいたうさこの
はやとちりであった。
とても美味しい、びっくりするくらい美味しい蕎麦、でもなんだか当たり前の
ようにも思ったりした。だって湧水を囲んで数軒蕎麦屋が建っていて、これが
みな古びていて、むかーしからここで商売やってんのよ、悪い?ってな雰囲気
で堂々としている。悪くない悪くない、ぜんぜんいいですと聞かれもしないのに
言いながら湧水を汲んで味見をした。
水はうちの天然水と似た味で、やわらかなやさしい水。日本の森の樹々と土に
抱かれた水って感じでした。ベイビーがごくごく飲んだからマチガイない。
(彼は美味しい水のみ慣れてしまってPAの水道水を汲んであげても首を横に振る
犬なのである)
水汲み場でも先に来ていた若いあんちゃんに「水、直接それ入れたらダメです」
と何もアクションしてないのに言われた。500mlのペットボトルを手にして
突っ立っているうさこのマヌケっぷりを見抜いて思わず口にしたのであろうと
推察し、す、すみませんと謝ってしまう。
そしてこのようなときにうさこはすぐに続けてほんとに知らないフリをして
しまうのである。「どうやって汲めばいいの?」なんて聞いたりしちゃって。
そんなこと見りゃわかるのであるが、これは一応尋ねておこうという気にさせる
真剣なまなざしのあんちゃんなのであった。
ひしゃくと漏斗が置いてあるのでそれを使用せよ、ってなことをあんちゃんは
指差しながらキッパリと言って立ち去ったけど、見送っていたらバイカーだった。
バイカーには隠れ温泉とか天然水の在処とかに詳しい人がいると知っていたが、
ひょろっとした青年と天然水とバイクは妙に似合っていなくて、かつリアルで
よかった。
ぜんたいに、のどかな雰囲気の一角に立って、ここはなんかいいぞーと思った。
国道沿いは大内宿へと向かう車で土日混雑し、どこの田舎も同じな風景になって
趣向にかけてつまらないと思いつつ走ってきたが‥。
ちょっと道をそれてみるとそこはそこの生活感があり、通りすがりのヨソモンには
関係ない時間が流れているのであった。
茶店が肩を寄せ合うように並ぶ路地であるのに、媚びた感じがまったくなかった。
変に田舎を売り物にしてツッパってもいないし、あのキレイなアネさんが
「食べたいなら食べなさーい、来たいなら来なさーい」とちょっと訛りながら
言う声が聴こえる気がした。