先日、久しぶりに両親のお墓参りのために帰省しました。兄の具合が芳しくないのも理由のひとつです。帰省を決めたのはお盆休みに入ってからですから、いたって能天気な行き当たりばったりの我が人生ですが、4年ぶりの帰省となります。「故郷」に懐かしさを思う反面、この歳になると古き良き時代への回帰に、妙な不安と恐怖が混じり合うのは、どういうことなのでしょうか。突っ張って生きている現実に目をやることの怖さ。そんなことを思いながら週末、故郷に向かいました。
場所は中国山地の山懐。以前と違って地方のJRは、幹線以外は衰退の一途を辿っていますから、昔のように列車で移動しようものなら、ずいぶんと時間がかかってしまいます。そんなわけで、今回は伯備線の生山駅を降りると、タクシーを飛ばして40分。実家に直行するのではなく、まずは八岐大蛇の伝説で知られる船通山の麓に佇む斐乃上温泉に立ち寄りました。この温泉、知る人ぞ知る日本三大美肌温泉(アルカリ性単純温泉)で、数ある温泉地のなかで私が最も好きな温泉です。小規模な宿が2軒しかなく、客を温かく迎えてくれるのもいい。冬場には囲炉裏を囲んで岩魚を焼きながら地酒に酔うのもいい。さながら柳田國男の世界といったところでしょうか。のんびりと温泉を楽しむことができます。ところが宿に着くと、われわれ夫婦の行動を嗅ぎつけた姉たちが、松江から出雲からやってきました。ふだんの失礼を詫び、夜遅くまで語り合いました。
翌朝、宿を跡にすると今度は実家に向かいました。大きな屋敷をいまは兄夫婦が管理していますが、奥の間の仏壇にお参りをして、昔のままの私の部屋をのぞきます。主が決して帰ることのない部屋は、そのままでした。ふっと母親が現れるような錯覚を覚え、なんだか時間が止まっているようで怖い瞬間でもあります。みんなでお墓参りをしたあと、お寺の山門から久しぶりに生まれ育った街並みを眺めました。変わっているようで何も変わっていない。いや、実際は変わっているのに、そう見えないほどの年月が過ぎた。ふっと昔友達と遊んだ風景が浮かんでくる、そんな思いがいたしました。
残念だったのは、やはり病身の兄の姿でした。もう70代も後半になる兄は、すでに私を認識できないところまで老いが進んでいました。でも、入居している介護センターは近代的な施設と介護スタッフの方々の献身的なサポートで知られ、兄に温かく優しく接していただいている。そんな風景を見て、安心もしましたし、何よりも介護スタッフの方々の献身的な振る舞いに感服しました。こうした福祉医療現場で働く方々の存在の大きさを改めて思ったものです。いずれ、私もこうした施設のお世話になるのかもしれないと少し寂しく思いました。
きょうは週の半ばですから、このへんでやめておきます。強行軍ながら得るものも大きかった帰省となりました。帰途、私は家内と別行動で出張先に馳せ参じ、実は昨夜遅く帰宅しましたので、少しお疲れ気味です。義務でもなんでもないのに、せっせとブログを更新する自分自身を思いました。
【写真説明】
上段は斐乃上温泉の宿、中段は船通山。その山懐に斐乃上温泉があります。下段は両親、祖父、曾祖父の墓石が立ち並ぶ我が家のお墓の一画です。今は知りませんが、この地方では土葬でした。長い行列を連ねてお寺に向かったことを覚えています。
場所は中国山地の山懐。以前と違って地方のJRは、幹線以外は衰退の一途を辿っていますから、昔のように列車で移動しようものなら、ずいぶんと時間がかかってしまいます。そんなわけで、今回は伯備線の生山駅を降りると、タクシーを飛ばして40分。実家に直行するのではなく、まずは八岐大蛇の伝説で知られる船通山の麓に佇む斐乃上温泉に立ち寄りました。この温泉、知る人ぞ知る日本三大美肌温泉(アルカリ性単純温泉)で、数ある温泉地のなかで私が最も好きな温泉です。小規模な宿が2軒しかなく、客を温かく迎えてくれるのもいい。冬場には囲炉裏を囲んで岩魚を焼きながら地酒に酔うのもいい。さながら柳田國男の世界といったところでしょうか。のんびりと温泉を楽しむことができます。ところが宿に着くと、われわれ夫婦の行動を嗅ぎつけた姉たちが、松江から出雲からやってきました。ふだんの失礼を詫び、夜遅くまで語り合いました。
翌朝、宿を跡にすると今度は実家に向かいました。大きな屋敷をいまは兄夫婦が管理していますが、奥の間の仏壇にお参りをして、昔のままの私の部屋をのぞきます。主が決して帰ることのない部屋は、そのままでした。ふっと母親が現れるような錯覚を覚え、なんだか時間が止まっているようで怖い瞬間でもあります。みんなでお墓参りをしたあと、お寺の山門から久しぶりに生まれ育った街並みを眺めました。変わっているようで何も変わっていない。いや、実際は変わっているのに、そう見えないほどの年月が過ぎた。ふっと昔友達と遊んだ風景が浮かんでくる、そんな思いがいたしました。
残念だったのは、やはり病身の兄の姿でした。もう70代も後半になる兄は、すでに私を認識できないところまで老いが進んでいました。でも、入居している介護センターは近代的な施設と介護スタッフの方々の献身的なサポートで知られ、兄に温かく優しく接していただいている。そんな風景を見て、安心もしましたし、何よりも介護スタッフの方々の献身的な振る舞いに感服しました。こうした福祉医療現場で働く方々の存在の大きさを改めて思ったものです。いずれ、私もこうした施設のお世話になるのかもしれないと少し寂しく思いました。
きょうは週の半ばですから、このへんでやめておきます。強行軍ながら得るものも大きかった帰省となりました。帰途、私は家内と別行動で出張先に馳せ参じ、実は昨夜遅く帰宅しましたので、少しお疲れ気味です。義務でもなんでもないのに、せっせとブログを更新する自分自身を思いました。
【写真説明】
上段は斐乃上温泉の宿、中段は船通山。その山懐に斐乃上温泉があります。下段は両親、祖父、曾祖父の墓石が立ち並ぶ我が家のお墓の一画です。今は知りませんが、この地方では土葬でした。長い行列を連ねてお寺に向かったことを覚えています。