心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

東大寺コンサート「平成音声会」

2010-10-17 09:37:22 | Weblog
 先週末、社外での打合せを少し早目に切り上げると、難波駅から近鉄電車に乗って奈良に向かいました。新聞社主催の光明皇后1250年御遠忌慶賛奉納『平成音声会(へいせいおんじょうえ)』(東大寺コンサート)に招かれたからです。奈良駅に到着したのは、もう陽が暮れかけた時間でしたが、久しぶりの南都の街を楽しみました。

 駅から歩いて東大寺に向かう途中、興福寺の看板が目に止まったので少し寄り道しました。境内に入ると「興福寺創建1300年=国宝特別公開2010」を開催中で、運よく金曜日は通常より1時間遅い午後6時まで開館しているというので、中学校の修学旅行以来45年ぶりに拝観させていただきました。五重塔初層、東金堂後堂と見て回って、そのあと国宝館にも足を運び、非日常の世界に暫し時を忘れたものです。
 国宝館では、三つの顔と6本の腕をもつ三面六臂、そう、あの阿修羅像に、数年前京都国立博物館でお会いして以来のご対面です。あの不思議な静寂のなかで空を見つめる阿修羅、「君は何を思う」と何度となく問いかけながら、しかし私の心の落ち着きのなさ、動揺ぶりに気づきます。人が作ったものであるにもかかわらず、決してモノではない。そこに一人の人間が空を見つめて立っている。その悲しげでもあり、いや、すべてをお見通しでもある阿修羅の、あまりにもおおきな存在に何も言えない。次々と目の前に現れる仏様の像の前に、ただただ立ち尽くすしかありませんでした。
 どきっとする出会いもありました。それは「迦桜羅」と名付けられた鳥頭人間です。そう、35年前のことです。私の母親が亡くなって、葬儀を済ませて大阪に舞い戻った日の夜に見た夢の中に現れたのが、裃を着た何人もの鳥頭人間でした。母をどこかに運んでいく風景がぼんやりと浮かんできて、・・・・。それはそれは不思議な体験でした。翌朝、母は酉年だったからかなぁと、あまり深入りすることなく、いつの間にか忘却のかなたに置いてきたのです。興福寺の国宝館で再会するとは夢にも思いませんでした。

 そんな不思議な出会いのあと、本来の目的である「平成音声会」の会場である東大寺に向かいました。そのコンサートは、かの大仏殿前の野外特設会場で午後6時30分開演なのでした。大仏様の前が招待席になっていて、左右の芝生はブロックごとに区切った客席が用意されていました。主催者発表で5千人。でも天平の時代、東大寺の落成式には1万を超える人々がお祝いに詰めかけたといいますから、大仏様の存在感の大きいことがわかります。
 コンサートの出演者は、林英哲さん率いる「和太鼓」、THE BOOMというグループ、歌手のSalyuさん、ヴァイオリニストの川井郁子さん、最後は歌手の平原綾香さん、というメンバーでした。私にとっては何となく知っている方々でしたが、さぞ大仏様も喜んでいらっしゃったことでしょう。聞けば、天平の時代のお披露目コンサートでは、日本はもちろん、中国、朝鮮、遠くは今のベトナムからも奏者がやってきたそうですから、元々大仏様は音楽好きなのでしょう。
 今日の朝刊を見ると、1面に「興福寺中金堂で立柱式」の記事が載っています。そういえば、先日参拝した際、大きな天幕が張られた一画で会場設営準備が進んでいました。江戸時代に焼失した仏堂の再興のようで、2018年に落慶の予定だそうです。なんともスケールの大きなお話です。リタイアしたら、ゆっくりと奈良の街を散策したいと思っています。

コメント