心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

ようこそ「アンリオ夫人」

2011-11-20 09:44:10 | Weblog
 京都市美術館で開催中の「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」が、あと1週間ほどでその幕を閉じます。私が出かけたのは10月の半ばでしたが、その際、珊瑚婚記念にと購入したルノワールの複製画「アンリオ夫人」が、先週届きました。ようこそお越しくださいました。さっそく居間に飾りました。
 19世紀の後半、ブルジョア女性たちがオートクチュールを身につけて、パリの社交界に出入りしていた頃、ルノワールはそうした人々の姿を描きました。年若い舞台女優アンリエット・アンリオ(1857~1944年)を描いた作品「アンリオ夫人」(1876年)も、そのひとつです。時代背景としてはオペラ「椿姫」ともだぶり、ヴィオレッタを彷彿とさせるものがあると考えるのは、私だけでしょうか。

 ところで、暇を見つけては読み進んでいる「デオダ・ド・セヴラック」によれば、作曲家セヴラックの父ジルベールは、画家で、モネとはお互いに肖像画を描き合うほどの仲だったようです。当然に当時の印象派画家との接点が見えてきます。シスレー、モネ、ルノワール.......。セヴラック自身も多くの画家との交流があったようですから、舘野泉さんを契機に当時の時代風景が鮮やかに浮かび上がってきます。
 「デオダ・ド・セヴラック」に加えて最近、島田紀夫著「セーヌで生まれた印象派の名画」も眺めています。それに本業関連のものも含めて同時に5冊の本を、その時々の心の在り様にまかせて読み耽っていますが、こんな妙な生活習慣が意外な繋がりに気づかせてくれる。読書にはそんな楽しみがあります。
 
 話は変わりますが、先週の初め、秋田に行ってきました。日の出前の早朝5時半に家を出て、伊丹空港を午前7時30分に飛び立ち、紅葉に彩られた北国の山々が見える秋田空港に到着したのは10時前でした。その日の仕事を終えて、夕刻、陽の落ちた道を市内のホテルに向かう頃には小雪がちらほら見えました。

 翌日は、大阪に戻って夕刻の会議に出席しなければなりません。でも、せっかく秋田まで来たのだからと、出発時間までの間、晩秋の秋田の街を歩きました。遠出をするわけにもいかず、ホテルの方に紹介していただいた千秋公園に向かいました。秋田ニ十万石佐竹氏の居城であった久保田城跡です。姫路城と同時期の1603年の築城ですが、天守閣と石垣のないお城で、明治期に本丸が全焼したあと公園として市民に開放されているのだそうです。

 御物頭御番所を横目に表門をくぐると、広々とした本丸です。美しい紅葉を愛でながら、佐竹義堯公銅像を拝し、久保田城御隅櫓に登りました。

 市内を眺望すると、日本海側に牡鹿半島、遠くに鳥海山や太平山を望むことができます。古地図をみて、以前訪ねた角館が比較的近い位置にあることも判りました。山を越えた向こうには、大震災で今もご苦労が絶えない地域が広がります。盛岡は、長男君が震災復興対応で時々出張しているところ。柳田國男が著した遠野物語の舞台も、そう遠くはありません.......。

 リムジンバスに乗りながら、そんなことをぼんやりと考えていると、秋田空港到着です。ロビーでナマハゲのお面に見送られて、伊丹空港に到着、そのまま電車に飛び乗って職場に向かう。時間軸も空間軸もバラバラになって、なにやら不思議な感覚でしたが、平常心をもってオフィスに戻りました。これも、年季の入ったサラリーマンの特技なのかもしれません。
 
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