昨夜から雨が降ったりやんだりしていますが、今週水曜日から週末にかけて、名古屋と広島に出張する予定なので、台風27号の動きが気になります。今朝は、NHKラジオ「音楽の泉」にスイッチを入れて、シューマンの「交響的練習曲 作品13」「子どもの情景作品15」を聴きながらのブログ更新です。 さて、大阪市天王寺区にある四天王寺は、今から1400年以上も前の593年に聖徳太子が建立したと伝えられる、大阪市内では古くて大きなお寺です。その四天王寺さんで10月11日から「秋の大古本祭」(関西古書研究会共催)が開かれました。大阪に40年近く住まいながら、四天王寺さんには行ったこともない私ですが、先週、三連休の隙間をぬって出かけてきました。
さすが大阪です。お値段が安い。それに音楽、絵画などに関連する本が探しやすかったのが私には嬉しかったです。この日のお買い得は集英社「現代世界美術全集」超ワイド版(31×40センチ函入)。1冊定価4,000円の本を、なんと300円で売っていました。状態も悪くはありません。ゴッホ、ルノワール、セザンヌ、シスレーなど気に入った画家の4冊をご購入です。別のお店では、前から気になっている渡辺崋山の本、これが200円。この日最も高かったのは鶴見和子曼荼羅Ⅷ「歌の巻」で、1,000円でした。さてさて、いつ読む?(笑)
とりあえず、ゴッホの画集を眺めます。相応の仕様だけに、印刷とは言え、油絵の塊がにじみ出てくるような迫力があります。読みかけのままになっていた小林秀雄著「ゴッホの手紙」を取り出して読み進めました。弟テオに宛てたゴッホの膨大な手紙を丹念に読み解きながら、ゴッホの人となりに迫った秀作です。
ところで、先日、ネットで小林家の系譜を調べていて、驚いたことがあります。小林秀雄の東京大学時代の指導教授が、なんと東京駅を設計した明治建築の重鎮・辰野金吾博士の長男・隆氏(フランス文学)だったこと。妹の高見沢潤子さんのご主人が、なんと漫画「のらくろ」の作者・田河水泡(高見澤仲太郎)さんだったこと。田河水泡に弟子入りした一人に、漫画「さざえさん」の作者・長谷川町子さんがいて、潤子さんと近しい関係にあったこと。なによりも驚いたのは、父親の小林豊造さんが、日本ダイヤモンド株式会社の創立者であり、日本で初めてダイヤモンドの研磨技術を習得し蓄音機のルビー針を開発した技術者であったこと、でした。ここで、私とレコードの関係が急浮上です。なんとも不思議な巡りあわせではあります。
昨夜は、川喜田二郎著「創造と伝統~人間の深奥と民主主義の根元を探る~」を手にとりました。この本に関心をもったのは、「まえがき」のこんなくだりでした。「もしも、豪華船の中で自分の席の取り合いにばかり夢中になり、豪華船そのものが氷山にぶつかることを二の次にしていたら、言うまでもなく第二のタイタニック号になるかもしれない。しかし、今日の世界はまさにその愚劣さを演じかねまい。私はそれを恐れている。この本を書いたのも、そのためである。私たちの文明を、根本から立て直さねばなるまい。その出発点は、考え方の根底から改めることだと思う」と。4年前、享年89歳でお亡くなりになった、KJ法で知られる川喜田先生が20年前にお書きになったものです。
これで、東京・神保町の「神田古本まつり」、京都の「春の古書大即売会」と「下鴨納涼古本まつり」に次いで、大阪で開催される大きな古本市に出かけたことになります。お客は、圧倒的に中高年の方々が多いのですが、みなさんが置き忘れた何かを求めるような視線に、時代の警鐘を思ったものでした。
1冊の古本を通じて、世の中のいろいろな事が見えてきて、それが意外と近しいところにあることに楽しい驚きがあります。同じ小林秀雄の「無常という事」でも、昭和21年9月初版の百花文庫(定価7円)を読むのと、真新しい全集第7巻を読むのとでは、何かが違います。Windows8.1が取り沙汰される昨今、裏移りのする古本の紙に印された活字のひと文字ひと文字に、何かしら時間の重さ、言葉の重さを思う私です。我が余暇の過ごし方に、古本の存在がますます大きなウエイトを占めつつあることを実感します。昨夜は遅くまで秋の夜を楽しみました。