♪恋人よ ぼくは旅立つ 東へと向かう 列車で......♪♪
1975年12月21日に発売された太田裕美のヒット曲「木綿のハンカチーフ」の一節です。先日のトークセッションで広井良典先生(京大こころの未来研究センター)の「創造的定常型社会とケア・コミュニティ・地域」と題するレクチャーのなかで話題になりました。高度成長期(後期)の頃、多くの若者たちが東京へと向かった時代を象徴する曲だったと。その後の日本は、2005年に初めて人口が減少に転じたあと、明治以降急カーブで上昇し続けていた人口がジェットコースターのように減少する動きをみせています。
この日、広井先生は、人口減少期を迎えて、これまで経済成長に拘り続けてきた社会の在りように警鐘を鳴らします。拡大・成長一辺倒から別の価値観なり社会の在り方が求めれているのだと。あまりにもスケールの大きなテーマなので、私なりの整理は未だきちんとはできていませんが、先日読んだ平田オリザ&藻谷浩介著「経済成長なき幸福国家論」と軌を一にするものでした。
会場はロームシアター京都でした。耐震工事中の京都南座に代わって師走恒例の「顔見世興行」の会場となっているため、たくさんの観客で賑わっていました。そんなロームシアター京都の自主企画『いまを考えるトークシリーズ』(文化庁文化芸術創造活用プラットフォーム形成事業)の第1回が「定常型・高齢化社会の”創造的”生き方を考える」だったというわけです。
この日登壇されたもうひと方は、「老人介護の現場に演劇の知恵を、演劇の現場に老人介護の深みを」という理念のもと演劇公演を行う「Oibokkeshi」の主宰者・菅原直樹さんでした。劇作家・平田オリザさん率いる「青年団」の俳優でもある菅原さんと広井先生。まったく違う立ち位置のようで、実は意外と近いところで時代を見つめていらっしゃることに気づきました。
菅原さんは、首都圏の大学を卒業後、岡山県奈義町に移住した、いわゆる「Iターン」の一人です。介護福祉士として老人ホームに勤めながら、認知症ケアに演劇手法を活かし、そのワークショップを各地で実施している30代の若き青年でした。
この日の演劇ワークショップでは、若者6名のうち1名を認知症の老人に見立て、老人の脈絡のない言葉に他の5人がどう向き合うべきかを考えるものでした。老人の言葉を「無視」して話を進めるケース、老人の言葉をみんなで受け止めながら話を進めていくケース。介護手順の効率化とは異なる視点で、老人との向き合い方を考えます。やっかいものとしての老人ではなく、一人の人間として受け止める。それを演劇手法を通じて介護現場に活かしていく........。ふと、何年か前に読んだ平田オリザ著「わかりあえないことから~コミュニケーション能力とは何か」を思い出しました。
さてさて、今週も出かけることの多かった1週間でした。火曜日には「街歩き」企画で京都は国際会館を見学しました。現役の頃何度となくおじゃました会館ですが、建物としての会館に向き合うのは今回が初めてでした。その後、岩倉具視幽棲旧居、實相院を巡りました。この日の参加者は25名。来年の2月には大阪中之島の日銀本店、大阪倶楽部などを歩くコースを企画中です。
木曜日には師走の風物詩「終い弘法」に出かけました。弘法大師さんの月命日にあたる21日に開かれる縁日には、日用雑貨品から植木、骨董品まで多様な露店が並びますが、1年の締めくくりの「終い弘法」は賑わいが違います。今回は京都の東寺に行きました。平日だというのにたいへんな人出でした。この日の収穫は家内お気に入りの陶器のお皿6枚でした。
翌22日つまり今日は、ことし最後の仏像鑑賞会に参加してきました。行先は奈良の秋篠寺と西大寺。いずれも8世紀半ばに建立されたお寺です。室町、鎌倉時代に造られた仏像に向き合いながら、それぞれの表情に時空を超えた世界を思う贅沢な時間を過ごしました。
以上でシニアの仕事納めならぬ「活動納め」です。今年もあと1週間となりましたが、つい一か月前に帰省した長男君と次男君が年末年始も我が家で過ごすとのメールあり。またまた総勢13名が集う賑やかなお正月になりそうです。なので、明日からは大掃除のお手伝いが待っています。併せて、この1年間の振り返りもしておかなくては年を越せません。部屋の掃除をしながら考えましょう。