心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

温泉宿で読書に耽るシニア夫婦~夕日ヶ浦温泉

2017-12-09 15:26:31 | 旅行

 週の後半に予定していたスケジュールが急に変更になってしまい3日ほど空白ができてしまいました。さあてどうしよう。すると我が奥様いわく「温泉に行こう。カニを食べに行こう」だって。急にそんな都合の良いプランがあるだろうかと思いきや、ネットでいろいろ調べてみると、ありました、ありました。
 というわけで一泊二日で日本海に面した京丹後市は夕日ヶ浦温泉に行ってきました。この温泉には7年ほど前の年末にも一度おじゃましたことがあります。当時は須賀敦子さんのエッセイに出会った頃で、ポケットに須賀さんの文庫「ユルスナールの靴」を忍ばせて出かけました。今回は、藻谷浩介&NHK広島取材班の角川新書「里山資本主義~日本経済は安心の原理で動く」をリュックの中に忍ばせての旅となりました。
 大阪・梅田から高速バスに乗って舞鶴若狭自動車道を北上し、福知山、綾部、宮津、天橋立を通って京都丹後鉄道の峯山駅前で下車、鈍行列車に乗り換えてふた駅目にある夕日ヶ浦木津温泉駅が最寄り駅でした。その間ざっと3時間半、晩秋の奥丹後の風景を楽しみながら読書三昧です。
 京都丹後鉄道(旧北近畿タンゴ鉄道)は、京都府や福知山市、宮津市などが出資する第三セクター鉄道で、西舞鶴と宮津を結ぶ宮舞線、福知山と宮津を結ぶ宮福線、宮津と豊岡を結ぶ宮豊線からなり、営業運転は全長114キロほどの小さな鉄道です。小さくてもこの地域の方々にとっては大切な交通機関で、過疎化と利用者減少の荒波にもまれながらも経営の刷新を図りながら踏ん張っています。
 今回は峯山駅で乗車して網野駅を経て夕日ヶ浦木津温泉駅下車という短い距離でしたが、運賃は320円と割高です。でも晩秋の奥丹後の風景を楽しめたので負担感はありません。私が乗った日も、地元の方々に混じって数組の温泉旅行客の姿がありました。
 初日は晴れていましたが、翌日は強い雨。そんな厳しい自然環境のなかに広がる田圃が刈入れを終えてひと休みしている風景が車窓に流れていきました。我も我もと先に行こうとする都会の電車と違い、ゆったり感満載の列車の旅も捨てたものではありません。
 今回は急な計画でしたから、宿は少しお高めの佳松苑「はなれ櫂」に決めました。15室ほどのまさに「はなれ」の風情が漂う静かなお宿でした。晩秋の日本海に沈む夕日を眺めながら露天風呂に浸かるも良し。美味しいカニをいただきながら地酒に酔いしれるも良し。ソファーに座って本を読んだり、音楽を聴いたり.....。(下の写真はホームページから借用)
 旅に出ると、ついつい忙しく観光名所を歩きがちですが、今回は少し違います。推理小説に読み耽る家内を横目に、「里山資本主義」を読んでいる私がいます。ときにはこんな旅行があっても良いかもしれません。そんなシニア夫婦を遠くから温かく見守って、さりげなく振る舞っていただいたお宿の若いスタッフさんたちの高いホスピタリティも印象的でした。
 「里山資本主義」は、「21世紀のエネルギー革命は山里から始まる」という衝撃的な見出しから始まります。中四国地域の山間地で、過疎化・高齢化の波を真正面から受け止めながら、地域の再生・復活を実践していく人々の生きざま、国の助成制度が逆に地域の自己決定能力を削いでいる現状が記されています。豊かさとは何か。持続可能な豊かさとは何か.....。
 舞台が中国山地ということもあり、文中には私が生まれ育った奥出雲が登場します。高速バスの車窓に流れる丹後路の自然風景もダブってきます。昨年旅行してきたばかりのオーストリアにも話が及び、林業最先端の事例が紹介されます。経済成長だけを最優先に物事を動かし、グローバリゼーションの流れに押されるように歩んできたこれまでの道のりを振り返って考え直してみる。そんな時間を私に与えてくれています。
 「里山資本主義」には、千葉大学から京都大学のこころ未来研究センターに移籍された広井良典先生も登場します。国際経済のマクロ分析がご専門の浜矩子先生までご登場とは恐れ入りました。ここ数年、問い続けてきた事柄が、この本を通じて有機的に繋がっていくという意味で、嬉しい出会いとなりました。ここにきてぼんやりと鶴見和子先生の内発的発展論にも通じるものを感じています......。
 ここで話題を変えます。先日の日曜日に町内会恒例のお餅つき大会がありました。朝早くから長女の孫君たちがやってきて、お餅つきを体験したり、つき立てのお餅をおいしそうに頬張ったり。楽しいひとときを過ごしました。ふだんはひっそりとしている街ですが、この日ばかりはどこから湧いてきたのかと思うほど子供たちでいっぱいでした。
 今年もあと3週間もすれば年の瀬を迎えます。そのスピード感には驚くばかりです。それはそうと、先日のカレッジでは健康寿命と健康スポーツについてお話しを伺いました。男性の平均寿命は79.55歳と健康寿命70.42歳との間に9.13歳の差があり、大阪に絞ると男性の健康寿命は全国ランキングでワースト5の70.29歳だとか。その差をいかに短くするかが課題になりそうです。私の場合は、まだまだ深刻な話ではありませんが、心身ともに歳相応のトレーニングを心掛けたいと思っています。

コメント (4)