心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

シニアにしてなおも「迷えるヒツジ」??

2017-12-15 21:17:30 | 西国巡礼

 先日、カレッジの校外学習の一環として、滋賀県の西国第13番札所「石山寺」とMIHO美術館に行ってきました。近畿地方にも寒波が押し寄せた日で、時々みぞれが舞うそんな寒いなか、元気なシニアたちは出かけました。
 石山寺は、聖武天皇の勅願により天平勝宝元年、良辨僧正によって開祖され、歴朝の尊崇あつい由緒ある寺院で、一時期、戦の舞台になったこともあります。ご本尊さまは如意輪観世音菩薩。本堂は縣下木造建築では最古のもので、内陣は平安中期、外陣は淀君の修補になるものだそうです。堂内には紫式部が「源氏物語」を書いたと伝えられる「源氏の間」がありました。硅灰石という奇岩の上に立つお寺ということで「石山寺」と名づけられました。
  ボランティアガイドさんの案内で、石段をのぼって御影堂、毘沙門堂、観音堂、蓮如堂などを見て回り、本堂にお参りしたあと、鎌倉時代に建築された多宝塔とご対面です。長い年月、風雪に耐えた多宝塔、昔の切手のデザインに採用されたこともあるのだそうです。ここ石山寺を舞台に様々な人間模様が繰り広げられたであろうことに思いを馳せながら、御朱印帳に記帳をいただいて帰りました。
 次に向かったのは、「MIHO MUSEUM」でした。とある宗教団体の創始者が収集したという国内外の美術品コレクションが展示されている美術館ですが、私の関心は、仏ルーブル美術館のナポレオン広場あるガラス製のピラミッドを設計した建築家I.M.ペイ氏が手がけたMUSEUMの建築空間でした。
 バスを降りると階段を登ったところに広場があり、その先にMUSEUMに通じる正門があります。門をくぐると、しだれ桜並木が続き、しばらく歩くと美しいトンネルが見えてきます。MUSEUMは、そのトンネルを抜け、橋を渡ったところにありました。ガラスと枠組で構成された近代的な建物が、広大な山の中に佇んでいます。
 ちょうどこの日は、開館20周年記念特別展「桃源郷はここ~I.M.ペイ氏とMIHO MUSEUMの軌跡」が開催されていました。日本の仏像、古美術のほか、エジプト、西アジア、南アジア、中国など世界各地の彫像、装飾品、金細工、彫刻などが配置され、なかには紀元前2千年も前の精緻な金具細工もありました。国や地域によって微妙に異なる古代の人々の感性に見入ってしまいました。
 ところで、今年は南方熊楠生誕150周年の節目の年にあたります。そんなわけで先日、NHKテレビ(Eテレ)で放映された「TVシンポジウム」の録画を見ました。10月22日に和歌山県田辺市の紀南文化会館で開かれた南方熊楠生誕150周年記念シンポジウム「いのちのマンダラに生かされる~今に息づく南方熊楠の思想」です。エコロジー、神社合祀反対、粘菌研究、南方マンダラ。訪米・訪英時代の生きざまを含めて、熊楠の魅力に迫るものでした。
 基調講演は生物学者の池田清彦さん、演題は「南方熊楠と生物多様性」でした。続いて、人類学者の中沢新一さんがコーディネーターを務めるパネルディスカッションです。タレントの篠原ともえさん、占星術研究家の鏡リュウジさん、栄福寺住職の白川密成さんという異色のメンバーでした。注目したのは、高野山大学時代に論文「密教と現代生活―南方熊楠・土宜法龍往復書簡を中心にして」をまとめた白川住職でした。その論文は、熊楠と土宜法龍が交わした書簡を通して熊楠の生命観に迫る労作なんだとか。
 中沢さんは「南方マンダラ」についてこう説明します。熊楠は、因果関係の連鎖から法則性を考える西洋の近代科学に限界を感じて、東洋の「縁起」の論理を提起したのだと。ふたつの事柄の因果の関係性だけではなく、「顕在化しているもの」と「潜在化しているもの」が複雑に絡み合って物事は動いているのだと.....。中沢先生には、来年の2月に京都で開かれるシンポジウムで直接お話を伺う予定です。
 パネリストの白川住職、どこかで聞いたことがあるお坊さんです。思い出したのがお遍路で参拝した四国八十八カ所第57番札所・栄福寺。境内にある看板に映画「ボクは坊さん」のポスターが貼ってありました......。すっかり忘れていました。さっそく近所のTSUTAYAで借りてきました。伊藤淳史主演、新米住職の奮闘と成長を描いたドラマ、とあります。もちろん物語の主人公は、白川住職でした。
 ...........石山寺、MIHO MUSEUM、南方熊楠、白川住職。こうして1週間を振り返ってみると、なんとなく人の「生きざま」「生き仕方」、そして「社会の在り様」を考えている私に気づきます。長い仕事人生とは違う何かを考えている。そうなんでしょうね。明日は、広井良典先生ご登場の「いま」を考えるトークシリーズ 「定常型・高齢化社会の“創造的”生き方を考える」に出かけてきます。シニアにしてなおも「迷えるヒツジ」は、先行き不透明な時代に自分の立ち位置を求めて右往左往しています(笑)。
 そうそう、さきほど年明けの1月半ばに出かける「歩き遍路」第三弾の宿と高速バスの予約を済ませました。宿の主人に「冬の時期に歩き遍路する人はいますか」と尋ねると「寒いですからね。少ないです」と。かの家田荘子さんのブログをみると、ちょうどこの週末、私が歩く予定の太龍寺、鶴林寺、平等寺あたりを歩いていらっしゃるご様子です。太龍が岳の下も雪が舞ってキーンとした寒さなんだとか。体調を整えて挑むことにいたしましょう。

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