rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

夜霧が辺りを包んでいる

2011-09-12 00:00:30 | 随想たち
遠くの景色が霞んで見えはじめたのは、午後5時をまわる頃から。
最初は、なんとなくぼんやりと畑の上に白っぽい靄がたまりだした。
時間が経つにしたがい、だんだんと靄が濃くなりだして、今ではすっぽりと家の周りを包んでしまった。
自動車の滅多に通らない道端の疎らに立つ最寄の街灯が、とりわけぼんやりと白い光を放っている。
その街灯から更に離れたところにあるものは、今夜はその光の片鱗を捉えることも叶わない。
昼間の暑さと、その分大量に含んでいた水蒸気が、日の傾きと風が北寄りに変わり冷やされて、靄から霧へと変化した。
北側の網戸には、押し出された水蒸気が水滴となって、きらきら部屋の明かりを反射している。

ここは、平野の割りに高台にあるにもかかわらず、靄や霧の多い土地。
風のない、湿度が高く、昼と夜の温度差が大きいときには、こうして霧に包まれる。
雨が降らなくとも、植物達は命の水を得られるのだ。
明日の朝は、たっぷりと降りた露を戴いている草達に出合うだろう。
今は、カエルたちが甘露甘露と歌っている。
虫たちも、各々その音を伸びやかに、節度を持って、軽やかに、夜霧に響かせようとする。

自然は、時に慈愛に満ち、またあるときはその大いなる力を容赦なく振るうときもある。
人や生き物達がどうあろうと、我々もまた自然の一部。
人だけが、自然を手懐け、意のままに御すことが出来ようなどと、驕る事なかれ。
あえて謙虚に慎ましく、自然とともに生きていく術を探していこう。

夜霧は、辺りを満たし、生き物に命の雫をもたらすだけではないのだな。
今宵の思索の森へと、こうして誘ってくれだのだから。