

小春日和の週末、草津温泉へ向かう途中の渋川市にある原美術館を訪れる。
かつて東京の品川区に現代美術を専門とする、こじんまりと趣のある美術館だった。
今年の四月、その別館であった渋川市の美術館をリニューアルオープンしたところだという。
東京にあったころ、ロベルト・マッタや、イブ・タンギーの展覧会へ足を運んだことがある。
シンプルというよりはミニマムな様式で庭もあり、もともと個人の邸宅なことから、この家に住んでみたいと妄想を羽ばたかせるくらい気に入った場所だった。
今の建物は、水戸芸術館の建築デザインでもなじみの深い、磯崎新の作品だ。
確かに、随所にそれらしいテイストが見られて、初めて来た感じがしなかった。
広すぎはしないがゆったりとした空間で、日本を中心とした現代美術を鑑賞する。
平面の絵画作品も、立体作品、デジタルアート、コンセプチュアルアート、ビデオアートなど、手法は多様でユニークだ。
時代によって、作品に向き合うとき鑑賞者に求められるものが変わってくる。
たとえば、古典的作品では宗教や神話・寓話に関するもの。
時勢についての知識や異文化への関心、歴史認識、環境問題、などは現代美術鑑賞においては必要だと思うし、作品との対話を楽しめる気持ちのゆとりがあるといい。
美しい自然のなかにある広々とした空間は、それだけでもこの美術館に来る理由になるだろう。


ジャン=ミシェル オトニエル「Kokoro」2009
