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「ぼっち・ざ・ろっく」に思う、何か一つのセールスポイント

2023-01-22 18:42:42 | 漫画やアニメ


昨年のヒットアニメ「ぼっち・ざ・ろっく」は、極度コミュ障な女子高校生が、得意のギターを生かして仲間と居場所を作るストーリー。
幼少期から引っ込み思案で人とのコミュニケーションに困り感を抱いていた主人公が、ある日突然テレビに映ったロックバンドのインタビューを見て思い立った。
人前で演奏する華やかなロッカーの思いがけない本音、実のところ激しい人見知りであるという自分との共通点と、ギターができることによって社会に参加できているその成功例が、彼女に天啓をもたらした。
もともと彼女の父親がギター好きで家に楽器があったことも踏み切りやすかったのだろう、それから中学高校と、ギター演奏に打ち込みネット配信で高評価を得るまで努力した。
けれど、人と関係を築くのは早々甘くはなく、彼女なりに自己アピールをしてみるものの周囲の反応は得られなかった。
そう、自分でできる準備はしたものの、自分から一歩人に近づくことが難しかったのだ。
心の中では声をかけて欲しいと大きく叫んでいても、人には伝わらない。
いつも人から差し伸べられる手を待つばかりで、最後の一歩を歩み寄ることができないでいた。
けれども、ほぼ事故のような成り行きで、人と関わる流れができてからは、今までに築き上げたギタースキルの資源が一気に作用して、居場所と仲間、そして未来への希望を掴んでいった。

自分に自信が持てる何かがあれば、現状打破の決め手となる、つまり自己セールスポイントの有無の必要性を問うている。
そのためには、自分で打ち込めるもの、自分を知ること、そしてそれを昇華させるための努力が大切だとしている。
誰しもが納得しやすい論法だ。
本人自身や支える人たちにとって、それがあると心強い。
そのセールスポイントは、運動が得意、勉強ができる、演奏がうまい、絵が上手、ITに明るい、やさしい、素直など、所謂長所といわれるものだ。
「誰もが長所を持っている」というのは、はたしてそうであろうか。
気がつかないだけ、まだそれを伸ばしていないだけ、とするのは簡単だ。
人は皆、スタートが同じ条件ではなく、個人の資質、環境、どれもが違う。
努力が足りないからだ、甘えているからだと、勝手に評価して非難していいものだろうか。
人は、ひとりで生きられるほど強靭な生き物ではない。
人にはそれぞれ背景があり、その人の歴史がある。
お互いにそれを思いやって、個人を取り巻くそれぞれが、ちょっとだけ助け合ったり心を砕くだけで、人が生きたいと思える世界になるだろう。
虚構の物語ではあるけれど、ぼっちちゃんは、ギターのテクニックで人と関わる資源は得たものの、人から差し伸べられた手を受け取る勇気と、自分から働きかける覚悟と、それぞれを思いやれる心の柔軟性があったから、世界が開けたのだ。
いつだって人々は生き辛さのなかにあるが、ここ数年加速度を増しているように思えてならない。


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