Q:採卵手術後数日以内に海外旅行に出発したらダメですか?
A:採卵手術後数日以内の海外旅行出発はやめましょう。
開院してから今まで、上記質問を受けた事がありませんでした。
また、採卵手術後数日以内に海外旅行に旅立った方もいらっしゃいませんでしたし、
採卵手術後すぐに海外旅行に出掛けていく計画を立てておられた方もいらっしゃいませんでした。
新たなご質問を頂きましたので、こちらで解説させて頂きたいと存じます。
以下となります。
卵巣刺激で使用するホルモン薬や採卵時の卵胞穿刺など、
体外受精・顕微授精の行程では、幾つかの副作用や危険が考えられます。
こうした問題が起きないよう、とくおかレディースクリニックでは細心の注意を払って治療を行っています。
万が一の場合も適切な対処を行い、患者さんの早期回復に努めます。
採卵手術後の海外旅行は、何かあった場合の対処が不可能となりますので、当院で責任のとりようがありません。
以下に、「採卵手術後の危険について」書かせて頂きますね。
1) 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
卵巣刺激や排卵誘発剤を使用する事によって起こる可能性のある副作用です。
薬や注射の効き方には個人差があり、
反応が強すぎた場合に過剰な数の卵胞が発育して卵巣過剰刺激症候群になる場合があります。
卵巣腫大・腹水や胸水の貯留などが起こり、重症時には血栓症、呼吸困難などの症状が出てきます。
その場合は、経過観察・自宅安静もしくは通院により点滴治療を行う場合もあります。
重症化すると手足の運動麻痺、視覚障害、感覚麻痺などの後遺症を起こす危険性があります。
そのようになる前に入院措置をとります。
2) 腹腔内出血
採卵時に起こる可能性のあるリスクです。
採卵手術は超音波下で慎重に卵胞穿刺が行われますが、ごくまれに腹腔内出血を引き起こす事があります。
手術後だけでなく、数日後に発覚するケースもあります。
その場合はすぐにご連絡を頂く事となります。
3) 感染
採卵手術は膣から卵巣に向かって針を刺し、卵胞液と卵子を回収している為、少なからず卵巣には傷が出来ます。
ごくまれに採卵時に膣内の細菌が腹腔内に入る事で、
卵巣・子宮・卵管・膀胱などの骨盤内感染症と思われる発熱や腹痛などの症状が起こる事があります。
この予防として、当院では採卵前に必ず膣分泌培養検査を行って頂き、心配になる雑菌がある場合は膣錠をお出ししています。
また膣内の十分な消毒と抗生剤の投与を行います。
特にチョコレート膿腫や卵管水腫、過去に骨盤腹膜炎を起こした事がある方は注意して経過観察を行っていきます。
採卵手術後すぐの海外旅行出発では、それらの対処が出来ない危険があります。
上記はごくごくまれに起きるリスクです(ゆえに滅多に起きる事はありません)が、
それを承知の上で海外旅行を許可する訳には参りませんので、
やむなく海外旅行をされる場合は、自己責任のもと行かれる事となります。
という理由で、当院では、採卵手術後すぐの海外旅行はやめて頂いております。。
人生、万が一という事もお考えになられてから、慎重に計画を立てていきたいものです。
ーby事務長ー
