大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・148『修学旅行・三日目・3』

2024-11-19 17:24:07 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
148『修学旅行・三日目・3(ささやきの小道)』   




 安倍晴天かと思ったオニイサンは一瞬しゃがんだかと思うと、それっきりになり、鹿の集団も磁石を遠ざけたパチンコ玉みたく結合が緩くなって、飛火野のあちこちに散っていった。不思議と、こっち側にやって来る鹿は居なかった。

 まあ、昨日からずっと鹿なんで、ちょっと飽きてもきてる。興福寺でいっぱい鹿煎餅やったしね。


「さあ、午後の部いこうか!」


 こちらも真知子の声でお昼を終えて出発する。

「あ、ささやきの小道ですぅ!」

 ロコが参道脇の道しるべを指さす。

「京都の哲学の小道と並んで、有名な散歩道なんですよ、ここを抜ければ志賀直哉旧居にも近いです!」

「ああ、そうね。哲学の小道には行けなかったし」

 たみ子の一言が続いて、道を南にとる。

 道幅はほんの二三メートル。それで両側は一メートルちょっとの土手になってて飛火野からは地続きなんだけど、丈の低い木がいい感じの密度で茂っている。ボンヤリ歩いてると、ただの林の中の道なんだろうけど、これは違う。

 林の中は草とか蔦はほとんどなくて、その気になれば林の中だって歩ける。以前、富士の樹海の動画を観たけど、木々は乱雑に生えているし、草も蔦もボウボウ。踏み込むとしたら、ちゃんと足もとを固め、鉈とか装備を整えなければ入れるもんじゃない。だから、人生をお仕舞にする目的で踏み入った人たちは道路からそんなに離れていないところで亡くなっている。

 でも、ここは意識して見れば分かるほどに整っている。

「真ん中に小川が流れてたら、南禅寺の……ほら、水路閣の奥のやつに似てるね」

 表現は違うけど、佳奈子が同じ意味のことを言う。みんな「ああ……」と半分景色に見惚れながら返事をする。

「盆景って知ってる?」

 たみ子がむつかしいことを言う。

「ボンケイ?」

 馬鹿なわたしは、クリラクガンの時みたいに聞いてしまう。

「知ってます! 本物の木や苔やらを使って、お盆や鉢植えの中に景色を作るやつですよね?」

「うん、お祖父ちゃんがやってたんだけどね……プ、ププ(〃艸〃)」

「え、なによ」

「盆景って、焼き物の人形とかを置いたりするんだけどね」

「ああ、その盆景の人形みたいなのね、わたしたち」

「なんだか、侘び寂びの世界ですねえ(^▽^)」

「でも、なんで噴き出すの?」

 すぐ後ろで笑われたせいか、少し不機嫌そうに佳奈子が振り返る。

「お祖父ちゃん、人形は信楽焼で揃えてたの」

「信楽焼がおかしいの?」

「あ、それってタヌキでしょ!?」

 三軒隣りの玄関わきに置いてあるのを思い出した。信楽焼と言えばタヌキだ!

「ええ、あたしタヌキなのお!?」

「ううん、ちょうどタヌキが五匹並んでるの思い出したから」

「そうか、全員ならいいか」

「そうだ……」

 リュックから文庫を取り出すロコ、どうやら、これがネタ本みたい。チラリと見えた拍子は岩波文庫! わたしは『ガガガ』とか『電撃』とかがヘッドにくるのしか読んだことない。

「ここいらの木は、みんなアセビですよ」

 アセビ?

 あんまり馴染みのない植物だ。

「冬から春にかけて、白い花を付けるんだそうです」

「ああ、それは見事かも」

「……あ、分かりました! アセビの実は鹿には毒なんで、鹿は寄り付かないんだそうですよ!」

「「「「ああ」」」」

 納得した、それで、ここいらには鹿が居ないんだ。

「でも、なんで、こんな林の中に鹿よけ?」

「この先の高畑ってところに、春日大社の祢宜たちが住んでたんですけどね」

「ネギ?」

「ああ、神社に仕える男の人で神主のいっこ下の役職」

 稚児舞をやっただけあって、たみ子はよく知ってるようだ。

「フフ、神のお使いでも、しょっちゅう付きまとわれたらかなわんということですねえ」

「うん、鮮やかな紅葉もいいけど、こういう地味な草木もいいもんね」

「ちなみに、アセビは馬酔木とも書いて、馬も苦手みたいです」

「え、馬と鹿が……」

「あ、馬鹿除けになるのかも!」

 プ( ´艸`)

「いま、特定の人物が浮かんだ人は反省しましょう!」

 
 馬鹿なお喋りをしているうちに、アセビの林もぬけて、文豪の旧居が見えて来た。

 

☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!66『よし、これだ!』

2024-11-19 08:22:25 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
66『よし、これだ!』 





「よし、これだ!」  


 白線の二往復目には、新曲のタイトルが浮かんだ。

――間もなく列車が通過しますので、白線の後ろにお下がり下さい――

 会長室の白線は特別製で、駅の構内アナウンス、そして列車の通過音やホームの振動まで再現できるようになってやがる。窓ぎわのスリットからは、列車の通過に見合った風が「バン!」と吹き出して、光会長のキャップを吹き飛ばしちまった。

 光会長は、若い頃から、駅のプラットホームの白線の上に立って、通過列車の振動と風圧を全身で感じた時にアイデアがひらめくってあぶないやつだ(^_^;)。

 で、今、その効果が現れた!


『秋桜旋風(コスモストルネード)!!』


 季節性もインパクトも十分あって、あとは歌詞だ!

 光会長は白線の設定を山手線から新幹線にして足を踏ん張りやがった。

 新幹線は、シューっていう独特の接近音がする……列車接近のアナウンスは、もう耳にも入らなかったぜ。


 ドバッ! ドバッ! ドバドバ! ドバッ!


 衝撃的な通過音と風圧のショックで、小柄な会長は部屋の端まで吹き飛ばされやがった!

 しかし、壁には衝撃吸収のためのラバーが貼ってあって怪我はしねえ。怪我はしねえが、衝撃はハンパねえ。ハンパねえけど、二回転して、壁にぶつかったときには、最初のフレーズがひらめいてやがったぞ!


 特急を準急停車と間違えて♫ ホームの端まで吹き飛ばされ~た~♪

 ショック! ショック! ショック!!

 手にした花束、コスモストルネード!


「振り付けの春まゆみ、作曲の大久保は来たか!」

「はい!」

「ここに!」

 振り付け師と作曲家が、息を切らしながら会長室に入ってきやがった!

 さっそく、最初のフレーズに曲と振り付けが付けられる。

 ドバドバッ! ドバドバッ! ドバドバッ!

 ドバドバッ! ドバドバッ! ドバドバッ!

 それから、二回新幹線が会長室を通過し、そのMAXな風圧で、会長室はまさに嵐の中だぜ。

 デスクの書類はもちろん、パソコンのデスクトップまで吹っ飛び、ロッカーは倒れ、カーテンはちぎれ、部屋の片隅で他の細々したものといっしょに吹き寄せられてやがる!

 ドバドバッ! ドバドバッ! ドバドバッ!

 三回目の通過の時は、光会長は、雄々しく足を踏ん張って曲の一番を完成させてやがったぞ!


 オレの心は、コスモストルネード!


 振り付けの春まゆみも、二回スピンして決めポーズを完成させた。曲は、大久保がアカペラできめやがった!


「「「決まった!」」」


 作詞・作曲・振り付けが一発で決まちまった!!

 すぐに大久保はスコアに音符を並べ、春まゆみは振り付けのコンテを描いた。

 この間、わずかに13分13秒。13分後には伴奏用の編曲ができて、コンピューターに入力されて、一時間後には、AKRのメンバーが集められ、歌と振り付けのレッスンに入っちまった。もう目が回るぜ!

「会長、すごいですよ!」

 付き合いの長い黒羽ディレクターも舌を巻きやがる。

「な~に。軽いもんよ」

 そして、ボコボコになった会長の手には二番と三番の歌詞がしっかりと握られていたぜぇ。

 マユがもどってきたときは、もう夕方でよ、AKRのメンバーたちは、一通り、新曲の『秋桜旋風(コスモストルネード)』をマスターし、夕食を兼ねて一時間の休憩に入ってやがった。


「うそ、オモクロって、そんなクワダテしてんの!?」


 マユの姿をした拓美が目を剥きやがる。

 三人は、食事のあと、メンバーや研究生・スタッフたちで一杯のリハーサル室で話してんだ。

 下手に個室で話すよりも、この方が目立たねえ。なんせマユは、クララとマユの拓美を足して二で割った姿をしているんで違和感がねえしな。

「この話、黒羽さんに言ったほうがいいかな」

「言わなくていいわよ(*,,ÒㅅÓ,,)  」

 拓美は、きっぱりと否定しやがった。

「情報源聞かれたら困るし。わたし今度の『秋桜旋風(コスモストルネード)』はいけるような気がするの」

「そうね、今のAKRは会長から、研究生まで一つになれてるものね」

 クララも拓美に同調しやがった。

「わたしたちは、二つになってしまったけどぉ」

 マユは、オスマシして言ったぞ。

「ごめんね」

 拓美は、真っ直ぐに受け止めて、ペコリと頭を下げる。

「いいんだ、拓美の気が済むまで、そのアバターは貸してやっから」

「もうしわけない」

「ほんとにいいんだって。マユにもタクラミがあるんだからな」

「「え……?」」

 クララと拓美の声がそろった。


 マユはオモクロの研究生募集のパンフを開いた……。




☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

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