大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・150『修学旅行・四日目・1(万博跡地を横に見て)』

2024-11-21 17:22:58 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
150『修学旅行・四日目・1(万博跡地を横に見て)』   




 四日目の最終日は大阪だ。


 基本的に去年といっしょらしいんだけど、去年は大阪を二日目に持ってきていた。

 理由は簡単、大阪万博があったから。

 つまり、三年生は修学旅行に万博を組み込んでいた。

 万博も終わったんだから、大阪でもないと思うんだけど、すぐに代案も浮かばないので、最終日に持ってきた以外はそのまんま。学校というのは、なかなか慣習というか前例というものは変えられないんだね。

 奈良を出発して程なく生駒山を超える。

 おおぉ……!

 意外に歓声が起こる。

 目の前に大阪平野が広がり、手の届きそうなところに大阪湾。その向こうに淡路島、その右手には青々と六甲山脈と神戸の街も霞んで見えて、けっこう雄大な景色だ。

 湘南の海も雄大で好きだけど、言ってみりゃ見渡す限り太平洋で水平線が見えるばかり。それが、この景色は日本地図でお馴染みの近畿地方の中心部が全部見えている。

「こんなに澄み渡って一望に見えるのはとても珍しいですねえ、きっとみなさんの普段の行動がいいからでしょう(^▽^)。左手に小さな森のように見えておりますのが仁徳天皇陵で、正面に見えております緑が大阪城で……」

 バスガイドさんも職業意識に目覚めて、数分で、このパノラマのおおよそをガイドしてくれる。

「……大阪の端から端まで見えてるんだねえ」

「大阪は、日本一狭い自治体ですからねぇ」

 真知子が呟いてロコが補足する。

 日本は狭い国だけど、山越えの峠道程度のところから全景が見える都府県は、そんなには無い。こっそりスマホで検索すると、二十何年かすると関空が出来て、日本一は香川県に譲るみたい。

 たまたまなのか、気をきかせたのか、バスは万博会場のど真ん中、万博会場とエキスポランドの間を通る。

「惜しかったですねぇ、去年でしたら本番に間に合いました。万博会場はほとんどのパビリオンが取り壊され、現在は、万博記念公園に生まれ変わるために工事中でございます。また、左側も一部設備をリニューアルして来年には新エキスポランドとして営業再開となっております。チラリと見えておりますのが五つのコースを持ち、その総延長は2340メートルと世界最長を誇りますジェットコースター、ダイダラザウルスでございます」

 オオ…………!

「その向こうは観覧車ワンダーホイール、高さは40メートルですが、この北摂の地では一番の高さを誇ります。また、右手に見えますのが太陽の塔、大屋根は撤去されますが、岡本太郎の作になりますこの塔は永久保存が決まっております」

 オオ…………!

「歓声は二種類ですねえ」

 ロコが声を潜める。

「二種類?」

「はい、じっさいに行って懐かしんでいるのと、行けなくて残念がってるのとです」

「あぁ、そうだねぇ……」

 行けなかった子には申し訳ないので、小さな声で賛意を表しておく。

 10円男が小学生みたいに腰を浮かせてガイドさんの言う通り、ロコが指摘した通りの表情で見ているのが可笑しかった。

 バスは、その10円男の残念を癒すように、宝塚ファミリーランドを目指すのだった。

 

☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!68『病院潜入』

2024-11-21 07:26:51 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
68『病院潜入』 





 病院の駐車場に入ると、マユはちょっとした魔法をかけた。

 黒羽Dがドアを閉める寸前に、ナビのスイッチを切り忘れるようにな。

「あれ、切り忘れか……」

 で、ナビのスイッチを切り直しているうちに、ポチの姿のマユは、後部座席から抜けだして監視カメラの位置を確認した。

 豆柴とはいえ病院に犬が入り込んだら騒ぎになるからな。カメラの死角を拾いながら、黒羽の後をつけていったぜ。

 夜間受付で、黒羽は父の病室を尋ねやがる。その瞬間、受付のガードマンは監視カメラのモニターから目を離す。その隙に、ロビーの自販機の横に隠れる。病室はガードマンが黒羽に教えていたのを覚えているんで問題はねえ。

 あとはポチの姿をなんとかするだけだ……そこに運良く日勤空けのナースが更衣室に向かうのに出くわしたぜ。

 マユはナースの後をつけ、更衣室でそのナースに化けた。むろんナース服は、そのナースが着替えたものを拝借した。ナースの胸には渡瀬の名札がついていたぞ。


 病室は五階にある。


 エレベーターに乗っているうちに化けたナースの記憶の断片が浮かび上がった……吉永美優という若い患者のことが気がかりなようだぜ。骨肉腫が術後に全身に転移し、もう手の打ちようが無え、余命は黒羽のジジイ同様に一週間ほど。美優はナースと同い年みてえだ。

「おめでとう……」

 そう言って、美優はナースにブローチをくれた。死期を悟った美優が、同い年のナースの幸せを願って、少しずつ病床で作ったものみてえだ。

「あげる。幸せになってね」

 特定の患者に感情移入はしねえのが、この職業の鉄則みてえだが、さすがに渡瀬ナースはグッときやがった。そのブローチが、まだポケットに入っていやがる。

 エレベーターが上昇しはじめたときにそのブローチを出してみた。ユーノー (Juno)の横顔を彫り込んだブローチ。
 ユーノーは、ローマ神話で女性の結婚生活を守護する女神だ。渡瀬ナースはそのことを知らねえみてえだけど、マユは、そのことがすぐに分かったぞ。

 気づいていたら、渡瀬ナースは職業の規範を超えて涙したにちげえねえ。


「あ……」


 ブローチを裏返して驚いた。『ローザンヌ』のロゴが入ってやがる。ローザンヌは、黒羽と出会う前に知井子が、ゴスロリのコスを買った店……ナースの記憶にローザンヌのマダムの顔が……美優はマダムの娘だ!

 あとで寄ってみよう。そう思ったときには五階に着いていたぜ。

 マユは、黒羽が入った隣の空き病室に入った。隣の様子が手に取るように分かるぜ。ベッドにひと回り小さくなったジジイ、枕もとに二十代後半の女……黒羽Dの妹が文庫に目を落としてやがる。

「英二、何しに来た!?」

 ジジイは、病人とは思えねえほどでけえ声だ。

「お父さん、体にさわるわよ」

「……そこに座れ」

 次の声はひどく弱々しかった。やっぱり余命は一週間といったとこだ。ジジイはかなり衰えてやがる。以前、HIKARIプロの事務所で黒羽を叱りつけていたころの半分ほどに痩せ、顔は薬の副作用で黄色くなってやがる……心臓を生かすために肝臓を犠牲にしてやがんだ。

「なあ、英二……」

「なんだよ、オヤジ」

「おまえが、仕事に打ち込んでいるのは嬉しい」

「バカにしてたんじゃないのか。いたいけない少女を使ってあぶく銭稼いでいる角兵衛獅子だって」

「……思っていたさ。でもな、いつだったっけ、オレがおまえのところへ行こうとして(13~16回)地下鉄の通路で発作おこしちまって、その時助けてくれた女の子」

「ああ、知井子とマユか……」

「おまえ、あの子たち入れっちまったんだな」

「悪いか」

 妹がお茶を淹れる気配がした。

「お父さん、毎日チャンネルかえてはAKRの子たちのこと追いかけてるのよ」

 父と息子は同時に目を背けやがる。その隙間を淹れたてのお茶の香りが満たしたぞ。

「……みんなよくやってるよ。特にマユなんか命かけてやってるようなスゴミがあるよ」

「……そうか」

 そりゃそうだろ。あのマユの中味は拓美。生きた証(あかし)残そうって必死なんだからな。

「あんないい子たちを、あそこまで光らせたんだ。おまえの仕事は間違っちゃいねえ」

「え……あ、うん」

 黒羽は、窓辺に寄って背中で答えた。

「だけどよ……お前が身を固めないのが気がかりなんだ」

「……だ、だから、ちゃんといるって彼女は」

「古いこと言うようだけどよ、黒羽の家をお前限りにはしてほしくねえんだ」

「お父さん、ひょっとしたら彼女連れてくるかなって……期待してんのよ」

「期待なんかしてねえよ、どうせ英二のハッタリだ」

「そんなことないって。今日は急だったから連れてこれなかったけど、今度は必ず……」

「必ずって、いつだい……おれは、もう十日ももちゃしねえぞ」

「お父さん、そんなことないわよ」

「気休めはよせ。由美子、お前の顔に『長くない』って書いてあるぜ」

「お父さん……」

「泣くな由美子。おまえも英二も嘘はつけねえ。死んだ母さんが、そこんとこだけはちゃんと育ててくれた」

「ほ、ほんとうに嘘じゃない(;'∀')」

「なあ英二、今の仕事が一段落してからでいい、身い固めろ。由美子は、もう三十になろうってのに、ここんとこ男っ気一つありゃしねえ、なんでか分かるか?」

「三十ぐらいの独身女なんてザラにいるわよ。お父さんせっかちなんだから」

「由美子、養子になってくれることを条件に男を考えてるだろう……そんなこと考えてたら、行かず後家になっちまうぜ」

「そんなんじゃないってば」

「真田ってやつと別れたの……その伝だろ」

「由美子……そんな話あったのか?」

 窓ガラスに映る妹と目があって、取り乱す黒羽D。こいつのこんなところは始めて見たぜ。

「ないない、お父さんの妄想よ!」

 由美子が、顔を赤くしてムキになってやがる。

「オレ、今度は必ず……連れてくるから。由美子もつまらない心配すんな」

 三人とも黙っちまって、時計の秒針の音だけになっちまう。

「無理すんなって……」

「無理じゃないって、じゃ、オレ仕事残ってるから、また明日。由美子、悪いけど頼むわ」

 黒羽Dは、ぬるくなったお茶を飲むと、そそくさと出て行く。最後まで父の顔は見られなかったぜ。


 ハ~~~

 マユはため息をついたぞ。


 天使なら、安直に人の命を助けて自己満足しやがるんだろうけど、悪魔の使命は違う。
 人に試練を与え、その生をまっとうさせることにある。死ぬ、あるいは死んだ命に干渉することはできねえ。それができるのなら、あの拓美だって生き返らせてるぜ。

 マユは、ポケットのブローチを撫でて、美優の病室に向かったぞ……。
 


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

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