大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・154『お守りの落とし物と大映解散』

2024-11-29 11:29:39 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
154『お守りの落とし物と大映解散』   




 おや?


 学食目指して校舎を出ると、学食横の総合掲示板に新聞部の壁新聞。模造紙三枚のトップの見出しは『実り豊かな修学旅行!』。

 あんまりあか抜けないタイトルで、もう一週間たってしまっては微妙に周回遅れ。でも、新聞部の壁新聞なんて始めて見るし、修学旅行の記事だし、写真とかもけっこう使ってるし『食べたら、もう一度見ましょう!』というロコの意見で、とりあえずは学食。

 ほんの数秒掲示板で立ち止まったために、Aランチが品切れで玉子ドンブリ、ロコはお握りと天ぷらうどん。

 たみ子と真知子は代議会に出るために、今日はお弁当。どうやら、例のタイムカプセルのことを正式に提案するらしい。佳奈子もお弁当持って部室、後輩たちと来年の女バレの話をするらしい。

 MITAKAレギュラーの我々は仲がいいけど、いつでも一緒というわけじゃない。学校のスローガンを踏襲してるわけじゃないけど、自主自立なんだよ。

 あれ?

 食後、掲示板に戻ると、足もとに真新しいお守りが落ちている。まだ授与袋に入ったままで、1/3ほどが袋から出ている。

「八坂神社のだねえ……」「合格祈願ですねえ……」

 瞬間でストーリーが出来あがる。このお守りが、ここに落ちているかのストーリー。

「八坂神社とあるから、修学旅行で買ったものですねえ」

「買った本人が落としたか……」

「誰かにあげて、もらった本人が落っことしたか……」

 合格祈願だ、二年生の女子が三年生の男子に……お守りをあげるような仲だから……ちょっと羨ましい関係に違いない(#*´▢`*#)!

「ちょ、どこいくの!?」

 お守りを手に学食に戻ろうとするロコを呼び止める。

「落とし主は学食に居ます! 呼んで、返してあげなきゃです!」

「ダメよ!」

 ピークの学食で「お守り落した人いませんかあ!」「八坂神社の合格祈願のお守りい!」なんて叫ばれたらぜったい恥ずかしい。わたしらが一瞬で思いついた想像ぐらいは、みんなも思いつく!

「しかたない、生活指導に持って行こう」

 本館一階の生活指導室に向かう。

 生活指導室は無人のことが多い。

 生活指導というのは英語では表現できないらしいけど、意訳すればスクールポリス。学校のもめ事や厄介ごとが持ち込まれる。令和の高校だと、たいてい当番や常駐の先生が居て無人になることはめったにないんだけど、昭和の高校は、そういう面倒なところに先生たちは行きたがらない。

 でもね、二年の二学期ともなると知ってるんだよ。

 若杉先生とかは、お昼ご飯を生活指導の部屋で食べている。生指の部屋は本館の端っこで学食が近い。まあ、二分も有れば、トレーに載せて持って来れるからね。この時間ならきっといる。

「「失礼しまーす」」

「おお」

 予想通り、若杉先生の返事がして、中に入ると若杉先生と現国の杉野がAランチを食っていらっしゃる。わたしたちが食べ損ねたAランチ。

「二年三組の時司です」「同じく宮田です」

「「…………」」

 二人とも、テレビに気を取られて返事もしない。

「あの、学食横の総合掲示板のとこでお守りを拾ったんです」

「新品の八坂神社のです」

「え、ああ、そこに置いとけ……」

 こっちを見もしないで、お箸でテーブルを指す若杉先生。杉野はテレビの画面観てカンムシだし。

「よろしくお願いしまーす」「八坂神社のお守りですからあ」

 いちおう、ささやかに念を押してドアを閉める。

「なんか失礼しちゃうね」

「アハハ……でも、テレビのニュースも、ちょっとビックリでした」

「え?」

 わたしはワイドショー的なのをやってたことしか記憶にない。

「え、なにかやってた?」

「はい、大映が解散したってニュースです」

「え、ダイエー?」

 ダイエーと言われて頭に浮かんだのは、スーパーダイエーのことだった。


☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!76『ランチデート』

2024-11-29 07:05:17 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
76『ランチデート』 




 美優は一週間後に死が迫っている黒羽の親父のために黒羽の恋人役を買って出やがった……いや……ええとぉ、親父の願いを重荷に感じて、仕事に手が着かなくなった黒羽のため?……それとも、美優自身一週間と限られた時間の中で、精一杯恋の真似事をしてみたかったから?

 マダムも店にもどってから同じことを聞きやがった。母親としては当然だよな。

「わたしは、一週間後には死んでしまう。だから、好きなことをやる。それだけ……なぜとか、どうしてか、なんて理由を考えている時間はわたしには無いの」

 美優は店の開店準備をしながら、それだけを答えやがった。


 昼をちょっと過ぎて、黒羽が美優を食事に誘いに来やがった。


 タクシーで10分ばかり行った、こぢんまりした品の良いフランス料理の店に二人で出かけやがる。

「ほんとはディナーに連れてきたいところなんだけどね。親父や新曲のことで時間がないから、ランチでごめん」

「いいのよ、その代わり、帰りはタクシーじゃなくて……」

「うん……?」

「事務所まで歩いて帰らない?」

「いいよぉ……」

「あら、どこにメール?」

「クララに『30分自主練』」

「ごめんなさい、レッスンに響いちゃった?」

「いやいや、メンバーたちで考える時間をつくらなきゃと思ってたとこだから『黒羽の悪い癖は、なんでも自分でやっちまうところだ』って会長にも言われてたしね。美優ちゃんは、それを知らしめるために神さまが遣わした天使かもしれない」

「ま、お、臆面もなく(''◇'')ゞ」

「可笑しい?」

「知りません!」

 フフフ、憑いてるのは天使じゃなくて悪魔なんだぞぉ、小悪魔だけどな(≖͈́ㅂ≖͈̀ ) 。

 ランチとは言え、なかなかのもんだ。A-5ランク特選牛フィレ肉のグリル トリュフの香るソースをメインに、スープとスパーリングワイン。パンはできたてのものからチョイス。バターとオリ-ブオイルが付いていて、しっとりと食える。ゆったりと風を感じるので首を向けると、テラス越しにお堀が見えた。

 急いでというわりには、黒羽は40分以上かけやがった。美優は、もう食後のコーヒーに手を伸ばしてやがる。

「もっと、ゆっくりすればいいのに」

「アハハ、バイトの子が休んだときなんて、お母さんと交代で、お昼なんか5分ですましちゃう。やっぱり癖がでちゃうかな(^_^;)」

「店も、なかなか大変なんだな」

 出かける前、母が以前バイトをやってくれていたサキちゃんてのに電話してるのに気づいてやがる。美優の一週間を自由にしてやろうという心遣い……気がつかないふりをしてやがるけど、出ちまうんだよなぁ、サキちゃんが間に合うのは明日からだしな。


 帰り道は少し遠回りをしてお堀端を歩きやがる。
 
 美優は喋りっぱなしだったぜ(^〇^)。


 最初は身上調査みてえだ。ヒカリプロに入るまではどうしていたか? 学校じゃどんな子だった? 小さいころは左利きだった? いつまでおねしょしてた? いままでで一番手のかかったタレントは? テレビ局のお弁当って? 上着を着る時は右左どっちから手を通す? 新聞は読んでます? お父さんと妹さんの思い出は? 通販はアマゾン派?楽天派? 神田祭好きですか? 幽霊って信じます? 手を組んだら左右の親指どっちが上に来ます? 自分の鼻は大きい方だと思います? 22世紀まで生きたいと思います?

 なんだか手当たり次第で、会話が途切れたらどうしようと緊張していやがる。

 黒羽Dは、おかしくなってきやがった。小学校の時の靴のサイズを左右別々に聞いてきたときには思わず笑ってやがる。

「ハハハ、なんだか、質問ばかりだな」

「だって、デートなんてしたことないもの。それに……」

「それに?」

「婚約者としては、いろんなこと知っとかなきゃ、黒羽さんのこと」

「婚約者に黒羽さんはないだろう」

「そ、そうね……え、英二さん(*ノωノ)」

「さん抜きで言ってみ」

「そ、そんな……じゃ、わたしのことも美優って呼んでください」

「言えないことはないけど、お互い不自然だな……ま、しばらくは、さん・ちゃん付けでいいんじゃない」

 昼下がりの街は、昼の休憩時間が終わったのだろう、人影がまばらになってきた。

「英二さん」

 下りの階段になったところで美優が声をかけた。

「うん?」

 黒羽が振り返ると、そこに美優の顔があった。ほんの数センチの隔たりで、目をつぶった美優の顔がせまってきてやがる。

「オット……」

 そう言いかけて、二人のクチビルが重なってしまった。

 階段の段差を利用して、美優が体を預けにきやがったんだ。そうしなければ、二人の身長差ではクチビルは重ならねえ。

「美優ちゃん……」

「恋人同士、お互いのクチビルぐらいは知っておかなきゃ」

「大胆だね……」

 黒羽は美優の大胆さへの驚きに愛おしさが付いてきたのに、自身驚いてやがる。

「……この先は進入禁止」

 黒羽のつぶやきに、美優の心は、トキメキとガッカリが一度に来た。

「道に迷ったな、この先進入禁止。大通りに出て、やっぱりタクシーにしよう」
 
 黒羽はディレクターの顔になって、道を戻り始めやがった……。




☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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