夕べの客は大変だった。
そう、あの十三人の団体さんだ。
幹事は湯田という感じのいいおっさん。
十三と湯田(ユダ)で分かると思うのだが、あれはキリストと十二人の弟子たちだ。
数年に一回、ユダが予約を入れて志忠屋で飲み明かす。
欧米人は十三人で飲み食いするのを不吉に思う。滝さんは気を利かして開いている席に人形を置いた。人形を置くことで13の不吉から逃れることが出来るからだ。
「いや、それはいいですよ」
キリストも弟子たちも微笑みながら人形を断る。これだけは十三人の意見が一致する。
滝さんを入れたら十四人ですから。
湯田さんなどは、滝さんの耳元で小さく、しかしハッキリと礼を言う。
こいつら、また、俺に仲裁させるつもりやなあ……。
思っていても、滝さんは口に出さない。
せっせと料理を作ってはテーブルに並べ、古今東西の酒をふるまってやる。早いとこ酔い潰すのに限るからだ。
宴たけなわの手前くらいでヨハネが口を開いた。
ヨハネは弟子たちの中で最年少。いつもは先輩弟子たちの話をニコニコと聞いている気のいい若者で、キリストや兄弟子たちの一挙手一投足を尊敬と憧れの目で見ている。
ただ、若さゆえに言葉が足りないところがある。だからこそ、宴の席では寡黙でいるのだが、この日は口を滑らせた。
「マグダラのマリアさんは、主を愛していらっしゃいます」
ここまでにしておけば罪はなかったのだが、一番弟子のペトロが最年少のヨハネに花を持たせてやろうと思った。
「主と交わった人々は皆、主のとりこになる。しかし、それだけでは言葉が寂しい、もう少しマグダラのマリアさんの愛の思いを描写してごらん」
青年の憧れや思いを寿いでやろうと、キリストも弟子たちも暖かい眼差しをヨハネに向ける。
麗しい心配り……なんだけど、ちょっと危ういと滝さんは思う。
ヨハネは続けた。
「マグダラのマリアさんは愛しておられました。だから、ベタニヤのシモンの家で食事をなさっていたとき香油の油を主の頭に垂らしたのです」
「そうだね、マリアは若さゆえに主に接した喜びを表す言葉を持たなかった。だから、歓喜の衝動のままに香油をね……そして、すぐさま、その長く麗しい黒髪で手のお体を拭ったのだよ。ユダなどは目を三角にして起こったけど、主は承知しておられたのだよ、だからこそ、マリアがなすままにされておられた」
「そうです、主もマリアさんを寿ぎ……いえ、主もマリアさんを愛しておられたのです。二無きものと愛しく思われていたのです」
「二無き者とは?」
ユダが身を乗り出した。
「主よ、マリアさんと付き合ってやってください!」
「付き合っているではないか、マリアはわたしの敬虔な信徒だよ」
「いえ、そういうことではなく。ぜひ、恋人に、嫁にしてあげてください!」
滝さんは、ちょっとヤバいと思って割って入った。
いつものように滝さんの割り込みで事なきを得たが、滝さんは、ちょっと後悔している。
また牧師から勧誘されそう……。
「