今西中通の作品は今までにも何点か扱わせていただいています。
1908(明治41)〜1947(昭和22)年の夭折の画家であり、その作品も中通が所属した独立美術研究所時代の先輩林武が、のちに美術雑誌に幻の画家として彼を紹介したことをきっかけに広く知られるようになりました。
結核という病気を抱え、また貧困に苦しみ、放浪の末に亡くなったといわれる中通の作品は、とても悲しく、優しく、独特の感性に満ちています
今回ご縁をいただいたのは水彩の裸婦像です。
裏に藤井久仁子さん(妻)のシールがあり、1941年制作とありますので、中通33歳の作品である事がわかります。
多くの額絵に囲まれたベッドに横たわるモデルの女性の肉体はふくよかでありますが、お顔はどこか幼い感じがして、画家のこの女性に寄せる思いは 決して情熱的なものではなく、細やかで切ないものであるように思えてきます。
そしてその切なさは、長谷川利行の作品に感じるものとは違う、束の間に揺れるマッチの火の温かさほどのようなもの。
しばらく眺め、またその時々の感想をお伝えしようと思います。
今西中通 水彩 「裸婦」 1941年
26.5×37.5㎝ 藤井久仁子鑑