火曜日、図書室のお掃除をするために、久しぶりに舟越保武のローラさんを移動させてみました。
するとしばらくブロンズの陰になっていた本棚が見えて
思わず掃除機を置いて小さな本を手に取りました。
パウルクレー!!
以前何度かペラペラと捲ったことはありましたが、今回少し読んでみると
クレーの日記の言葉がとても素敵で、またクレーの作品に触れた日本の芸術家たちの言葉や詩にも大変感動しました。
情報が多すぎて、見失ってしまうのですね。
今まで自分が何を求めてきたのかを。
歳を重ねれば、情報に惑わされない強い自分を作れると思っていましたが、
筋肉の衰えは、心の衰えにもつながっているかのように、
既存のものや、権力的なものについ磁石のように引きつけられそうになるのです。
ぼくは手を休める。ぼくのなかで
奥深く、優しくわきおこる思いがある。
ぼくはそれを感じる。
苦労もなく自信に満ちあふれた何かを。
色彩がぼくをとらえたのだ。
ぼくの方から追いかける必要もない。
色彩がいつでもぼくを捉えるだろう。これが幸福というものだ。
色彩とぼくはひとつになった。ぼくは絵描きなのだ。
〈クレーの日記より〉
ハッと我にかえる機会を与えてくれるのが、絵画作品なのだろうと思います。
絵描きが表現した「奥深く、優しくわき起こる思い」をその色彩や線を通し感じ、自分の思いにつなげる。
それが絵を見る人の幸福というものだろうと感じます。
ぼくが形あるものを観察するのは
芸術の表現のためであり
そこに、ぼくたちは自身の魂をも
のぞき込むことができる。
哲学と人はいうが、たしかに哲学には
芸術に似通ったものがある。
はじめは哲学がどれほど魂を観察できるかを知って
ぼくは驚いたものだ
〈クレーの日記より〉
絵を見ることは、自分の魂をのぞき込むこと。
時々この本を開き、またクレーの言葉などをご紹介したいと思います。