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愉しむ漢詩

漢詩をあるテーマ、例えば、”お酒”で切って読んでいく。又は作るのに挑戦する。”愉しむ漢詩”を目指します。

からだの初期化を試みよう 28 アローン操体法 余話-1 背伸び (10)

2016-01-16 15:49:30 | 健康
腱の反射について考えていくつもりですが、本論に入る前に「膝蓋腱反射」について触れます。

「膝蓋腱・・・」とあるから、腱から起こる反射反応と間違われそうです。写真1をみて頂きましょう。膝の図です。足を床から離し、ブラブラと浮かせ、リラックスして椅子に座っている状態を想像してください。膝のお皿の下側(膝蓋腱)を軽く叩くと、反射的に足がピョンと伸びあがります。「膝蓋腱反射」としてよく知られている反射反応です。

 写真1 膝蓋腱反射

ここで生理学的用語の解説を加えておきます。図で、筋紡錘から発した信号は、知覚神経を通って神経中枢である脊髄に入り、そこで運動神経に信号を伝達します。その信号は運動神経を通って、筋に至り、筋を収縮させます。

この信号発信から筋の収縮に至る経路を「反射弓」、脊髄内で神経線維が変わるところ、また運動神経が筋と接するところはともに「シナプス」と呼ばれている。シナプスでのそれぞれの神経線維の末端部は文字通り「神経終末」です。神経終末は、いろいろな刺激を受けて、信号を発信します。

ここで「膝蓋腱反射」は、確かに腱を叩いて起こしたわけですが、腱は、ポンと叩かれただけであって、「反射弓」の中に入って、何らかの役割を果たしているわけではありません。膝蓋腱を叩くことによって、その腱と繋がった太ももの前面にある大腿四頭筋が急に引っ張られます。ひいてはその筋の中にある筋紡錘が引き伸ばされて変形し、信号を発信して起こした反射反応というわけです。

したがって、「膝蓋腱反射」は、前回述べたと同様の脊髄反射に属します。図の脊髄の中で、知覚神経から運動神経へと一個のシナプスだけを経ていることにも注意してください。この場合は、「単シナプス性」反射と言われています。刺激から反応までの時間は短いわけです。

以上を押さえたところで、腱内の神経終末が関与する反射反応を見ていきます。

腱は、筋を骨に繋ぐ役目を担っている線維性結合組織です。それ自身収縮する能力を持っていません。そこで腱に関わる反射反応では、腱から発した信号で、腱自身に対してではなく、その腱に繋がっている筋などにどのような影響を及ぼすかが重要なのです。

腱では筋線維に近いところにゴルジ(Golgi)腱器官と呼ばれる知覚神経の終末が来ています(写真2)。ゴルジ腱器官は筋が収縮すると引っ張られて変形し、“引っ張られる強さ”を感知してその情報を発信し、神経中枢に伝える役目をします。筋の緊張状態を中枢に伝える鋭敏なセンサーでもあるわけです。

写真2 ゴルジ腱器官

写真からわかるように、腱は筋と直列に繋がっています。このことは筋が収縮した場合ばかりでなく、外力で引っ張られた場合でも、腱に対して引っ張る力が加わることを意味しており、このことを忘れてはならないでしょう。

筋が収縮した状態で、さらに外力の引っ張る力が、生理的範囲内であれば、ゴルジ器官から発信された信号は、生体を保護しつつ補償する方向に働くでしょう。しかし極端な例ですが、「こむら返り」のように、強力に筋が収縮したところで、さらに腱に負担を掛けるような処置を施していることを見かけることがあります。腱に損傷を与えるのではないでしょうか。この点は、次の項をご参照願いたい。

   「こむら返り」の対処法 -序   (2015-03-20投稿)
        〃         -実際 (2015-03-21投稿)
        〃        -あとがき (2015-03-23)

腱から発信された信号は、脊髄内では2,3個のシナプスを経て筋に行く運動神経につながります。すなわち、多シナプス性で、筋紡錘の場合とは違っています。

複数のシナプスを経る過程では、反射反応に時間がかかるばかりでなく、神経線維を変える過程で皮膚や関節、他の筋、また上位の脳中枢など、外部の状況の影響を受ける形をとります。したがって、反射反応の結果は一様ではないということです。

腱から発信された信号は、それが繋がった筋に対しては緊張をほぐす(抑制)方向に、一方、拮抗する側の筋に対しては緊張を増す(促進)方向に働くことが、よく見られるパターンのようです。これは負帰還性に働いて筋の緊張度を調節する働きであると考えられています。

逆に、状況によっては、自らの繋がった筋に対してむしろ興奮性に働く反射反応が起こることも知られています。筋が置かれている状況によって反応は異なるようです。

いずれにせよ、腱受容器の反射は、筋の張力の情報に基づいて、姿勢や運動を調節する働きをしていることのようです。

以上、座位での“背伸び”姿勢をもとに、からだの反応、さらに運動との関連を見てきました。立位での全身の“背伸び”では、日常の活動との接点がより多くみられるのではないでしょうか。続いて、<余話-1>の最終章として、立位での“背伸び”について考えていきます。

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