‘歩く’ことは、本来ヒトに備わった能力の一つです。今日、健康増進を目して、積極的に歩く‘散歩’が推奨され、また広く親しまれています。本項では、まず‘歩行’について概観し、さらに健康体操としての‘散歩‘の意義を少しなりとも高めることができれば と一工夫を加えた歩行法をも提起します。
まず、通常の歩行での下肢の大まかな動きを見てみます(写真1)。写真1は、歩行運動の1全歩行周期を示しています。通常の歩行運動では、一方の片足が踵を地につけ(踵着地)、その足が次に踵着地するまでの動きの期間を1周期とします。都合、2歩の歩数に相当します。
写真1:全歩行周期
写真1で実際の歩行運動を見ていきます。右足は踵着地(右:踵着地)後、体重を支えつつ身体を前に進めていきます。その間、その足は‘立脚相’にあります。その途中、他方の左脚は、地面から足先を蹴りだし(左:蹴りだし)、‘遊脚相’に入ります。
左足の踵が地に着き(左:踵着地)、‘立脚相’に入り、体重を支えながら前進する間に、右足は地面を蹴りだし(右:蹴りだし)、‘遊脚相’となります。最後に右足踵が着地(右:踵着地)して、1歩行周期を終えます。
歩行運動で、身体の前進移動を推進する主な力は、足の‘蹴りだし’により生じた力、遊脚相での下肢の前方への振れによる慣性力、立脚相にある脚の推進力、さらに全身が前進移動する慣性力などである。
前進移動の推進力は、下肢の働きのみによるのではありません。下肢の動きに歩調を合わせて、全身の各部も前進を推進するように規則的な動きをします。
まず、歩行中は、前進移動を促進するように、上半身が前傾姿勢となります。この点については、余話-1 背伸び(12)の稿も参照して下さい。
さらに、例えば、右足の踵着地後の立脚相では、着地した足部を基点にして、上半身が反時計方向に回旋するよう右腕・右肩を前方に、一方、左腕・左肩を後方に振って、遊脚相にある左脚の前方への振れを加速・促進しています。すなわち、上半身と骨盤以下の下半身は逆方向の回旋運動をして身体の前方推進を助けています。
他方、踵着地の際、踵と地面との衝撃により、前方推進にブレーキが掛かることも忘れてはなりません。その際の衝撃を緩衝する機能も働きだします。
歩行周期のうち、約20%の時間は、両足が同時に地に着いている時期です。しかし残り80%の時間では、左右それぞれ40%宛、一方が遊脚相にあり、他方の立脚相では片足で立つことになります。その間、重心の左右移動を伴い、姿勢が不安定で、身体は左右に揺れます。そこで姿勢を維持するよう平衡機能が働きます。
立脚相での片足立ち期間のほぼ中間で、前方へ移動する重心が体軸と重なる時点では、重心および頭頂が最も高くなります。それはまた片足で身体の重み(‘体重’そのものではない)を最大に受けている時点でもあります。
以上のように‘歩行’運動においては、身体の前進移動の推進、地面との衝撃の緩衝、上下・左右の揺れの抑制等々、総合的な神経・筋活動により、それぞれの機能が統合されて、より平滑な歩行運動が達成されていることになります。
ただ、‘歩行’運動からなる‘散歩’では、身体に掛かる負担のほとんどが身体下部に集中していることが容易に想像できます。特に、一万歩を超すような、運動量の大きい散歩の場合、健康的な「からだのケア」を考える時、念頭に置いておくべきことでしょう。
次回、歩行運動の各相で具体的に動員される筋群・負担の軽重について見ていきます。
まず、通常の歩行での下肢の大まかな動きを見てみます(写真1)。写真1は、歩行運動の1全歩行周期を示しています。通常の歩行運動では、一方の片足が踵を地につけ(踵着地)、その足が次に踵着地するまでの動きの期間を1周期とします。都合、2歩の歩数に相当します。
写真1:全歩行周期
写真1で実際の歩行運動を見ていきます。右足は踵着地(右:踵着地)後、体重を支えつつ身体を前に進めていきます。その間、その足は‘立脚相’にあります。その途中、他方の左脚は、地面から足先を蹴りだし(左:蹴りだし)、‘遊脚相’に入ります。
左足の踵が地に着き(左:踵着地)、‘立脚相’に入り、体重を支えながら前進する間に、右足は地面を蹴りだし(右:蹴りだし)、‘遊脚相’となります。最後に右足踵が着地(右:踵着地)して、1歩行周期を終えます。
歩行運動で、身体の前進移動を推進する主な力は、足の‘蹴りだし’により生じた力、遊脚相での下肢の前方への振れによる慣性力、立脚相にある脚の推進力、さらに全身が前進移動する慣性力などである。
前進移動の推進力は、下肢の働きのみによるのではありません。下肢の動きに歩調を合わせて、全身の各部も前進を推進するように規則的な動きをします。
まず、歩行中は、前進移動を促進するように、上半身が前傾姿勢となります。この点については、余話-1 背伸び(12)の稿も参照して下さい。
さらに、例えば、右足の踵着地後の立脚相では、着地した足部を基点にして、上半身が反時計方向に回旋するよう右腕・右肩を前方に、一方、左腕・左肩を後方に振って、遊脚相にある左脚の前方への振れを加速・促進しています。すなわち、上半身と骨盤以下の下半身は逆方向の回旋運動をして身体の前方推進を助けています。
他方、踵着地の際、踵と地面との衝撃により、前方推進にブレーキが掛かることも忘れてはなりません。その際の衝撃を緩衝する機能も働きだします。
歩行周期のうち、約20%の時間は、両足が同時に地に着いている時期です。しかし残り80%の時間では、左右それぞれ40%宛、一方が遊脚相にあり、他方の立脚相では片足で立つことになります。その間、重心の左右移動を伴い、姿勢が不安定で、身体は左右に揺れます。そこで姿勢を維持するよう平衡機能が働きます。
立脚相での片足立ち期間のほぼ中間で、前方へ移動する重心が体軸と重なる時点では、重心および頭頂が最も高くなります。それはまた片足で身体の重み(‘体重’そのものではない)を最大に受けている時点でもあります。
以上のように‘歩行’運動においては、身体の前進移動の推進、地面との衝撃の緩衝、上下・左右の揺れの抑制等々、総合的な神経・筋活動により、それぞれの機能が統合されて、より平滑な歩行運動が達成されていることになります。
ただ、‘歩行’運動からなる‘散歩’では、身体に掛かる負担のほとんどが身体下部に集中していることが容易に想像できます。特に、一万歩を超すような、運動量の大きい散歩の場合、健康的な「からだのケア」を考える時、念頭に置いておくべきことでしょう。
次回、歩行運動の各相で具体的に動員される筋群・負担の軽重について見ていきます。
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