ウェルチ氏は評価を単なる評価としてのみではなく、積極的に「企業の成長の源泉」として位置づけています。評価自体が武器のようです。
(p247より引用) 実際GEは出身に関係なくすばらしい人材を見いだし、育成することに熱心だ。私はいろいろなことに熱中する性質だが、社員をGEのコア・コンピタンシー(競争力の源泉)にすることへの情熱に勝るものはない。・・・製品を作るときは、違いをなくそうとする。だが人にかんしては、違いこそがすべてだ。違いを判断するのは簡単ではない。大企業で社員一人ひとりの違いをとらえる方法を見いだすのは至難の業だ。GEでは長年、人事評価に差をつける目的でさまざまな釣鐘型カーブや方形チャートを駆使してきた。業績や潜在能力を高、中、低で評価し、グラフ化する。また、「360度評価」を導入し、同僚や部下の評価も盛り込んだ。これはなかなかよかった。当初の数年で「上にへつらい、下につらく当たる輩」が誰かわかったからだ。仲間内の評価というのは何でもそうだが、この評価システムにしても、時間の経過とともに、「裏をかかれる」可能性がある。たがいに耳あたりのよいこと以外は言わなくなり、全員の評価がよくなる。現在、「360度評価」を使うのは、限られた場合だけだ。
(下p262より引用) 評価基準を固定化すれば現実に合わなくなる。相手にしている市場の状況は変化し、新たな事業が開発され、新しい競争相手が現れる。私はつねにこの質問にどこまでもこだわる。「われわれは自分たちが望んでいる特定の行動に対して正しく評価をし、報酬を与えているだろうか」評価と報酬を結びつけないことによって、求めて「いない」ものを手にすることもよくあるのだ。
ちなみに私の会社でも360度評価は試行的に行なわれています。が、私は気にしやすいたちなので結果については見ないことにしています。その背景には、私が360度評価をする際、被評価者を十分理解したうえでスコアリングしていないという事実があります。正直、「感覚」ではなく自信をもって評価できるほど相手を知らない場合がありますし、評価のための質問も表層的・短絡的なものが非常に多いのです。
現状のやり方では、効用よりもノイズ(ミスリード)の方が圧倒的に大きいように思います。
ジャック・ウェルチ わが経営(上) (日経ビジネス人文庫) | |
ジャック・ウェルチ,ジョン・A・バーン,宮本 喜一 | |
日本経済新聞社 |