今日では守旧的な机上の理論と考えられているケインズ理論も、その登場した時代背景と役割から見ると、当時は現状打破的な先駆的理論だったようです。(今頃になって、こういうことを改めて教えられていること自体、少々情けないのですが)
「著者がここに苦心して表現した思想は、きわめて単純であって、容易に理解されるはずである。困難は、新しい思想にあるのではなく、・・・われわれの心のすみずみにまで拡がっているふるい思想からの脱出にある」(雇用・利子および貨幣の一般理論(ケインズ))より引用)
ここでの「ふるい思想」とは、アダム・スミスから始まる自由放任主義であり、ケインズはそこからの脱出に苦闘したのです。
経済恐慌下の生産過剰・失業増大の状況においては、自由放任主義は一部金利生活者への海外投資の自由を正当化する理論に過ぎなくなっていました。
これに対しケインズは、政府主導の公共投資による雇用創出という「『夜警国家』を否定する政策」を主導したのでした。