(p328より引用) 主義といひ、道といつて、必ずこれのみと断定するのは、おれは昔から好まない。単に道といつても、道には大小厚薄濃淡の差がある。しかるにその一を揚げて他を排斥するのは、おれの取らないところだ。
安易な断定の排斥は、主義主張の多様性の容認であり、また、様々な人格の尊重でもあります。
(p330より引用) 人はどんなものでも決して捨つべきものではない。いかに役に立たぬといつても、必ず何か一得はあるものだ。おれはこれまで何十年間の経験によつて、この事のいよいよ間違ひないのを悟つたヨ。
知らず知らずのうちに、人は独りよがりな頭に固まっていきます。また、経験を積むにつれまた世の中の道理を悟るにつれ、物事をステレオタイプに決め付けてしまいがちです。
自分の頭の中だけでいくら考えても、お決まりの材料では月並みの料理しかできません。自分と異なるタイプの人の話をきくことは、自分の発想の限界を超える貴重な機会です。どんな人の話でもともかく「謙虚に聞く」ことです。
自分自身も折にふれ心掛けようとしていますが、なかなかできません。話を聞き始めて20秒くらいで、何らかの過去の型にはめてしまいがちです。意識して自戒しなくてはなりません。
過去の経験と古い知識は今の時代には返ってお荷物だと思うくらいでちょうどいいのです。
もうひとつ大事なことは、この多様性の容認の姿勢は人を活かすことに繋がるという点です。こちらの効用の方がずっと大きいかもしれません。