この本を読んでいて、先にご紹介したTOC(Theory of Constraints(制約条件の理論))以外にも、参考になりそうなツールがもうひとつありました。
本書のp76 p89 p120あたりに出てくるのですが、ある目的を達成するための手段が相対する(矛盾する)場合の頭の整理に役立つチャートです。この本では「コンフリクトの図」と言われています。
実際のチャート例は本で見ていただくとして、どんなものなのか言葉で説明すると以下のような感じです。(イメージは湧きますか?)
「『AをするためにはBをしなければいけない。』といった流れ図を2種類書きます。
その場合、Aに至る前提としてB1とB2という異なる2つの条件を設定します。その設定された条件(B1とB2)は相矛盾(対立)するものを仮置きしておきます。
そして、その2つのロジックのいずれが正しいかを確認するのですが、その際、Bの前に『本当に』という言葉を付け加えてみることにより熟慮・検証する。」というものです。
分かりにくいですよね。
簡単な例であげればこんな感じです。
- 品質を向上させる(A)ためには、コストをかけなくてはならない。(B1)
- 品質を向上させる(A)ためには、コストをかけなくてはならないとは限らない。(B2)
と仮置きして、それぞれの文の「B」の前に「本当に」という言葉を付け加えてみるのです。
- 品質を向上させる(A)ためには、「本当に」コストをかけなくてはならない。(B1)か???
さっと読んだだけでは、そのとおりと思うようなことも、意識して「本当に」と問い直してみると、実際はそうとは言い切れないケースに気づきます。
あと、本旨とはズレますが、本書の物語の中に以下のようなフレーズがありました。
本書(原書)の出版が2004年ということなので、エンロン・ワールドコムの粉飾決算事件が強く尾をひいていたのでしょう。
(p128より引用) この業界に生きる多くのマネジャーにとって、成長はまさに宗教なのだ。その宗教がゆえに、しばしば下劣な企業買収や不正行為が行われたりしている。
まさに日本では、この手の話は今まだ盛りです。