本書で示された道教的思考の第二法則は、「無為」です。
すなわち、自然の流れに逆らわない、万物は流転するという考え方です。
西洋では、「力」は、対象に対し直接的に強引なものとして作用します。
(p96より引用) 西洋的思想の根底にあるのは、「万物は硬直的であり、われわれが自ら働きかけない限り、変化することはない」とする考え方である。つまり、何か大きな変化を起こそうとするときには、多大なる労力を要するというのが基本思想として存在する。
他方、東洋の道教的立場では、力は、対象の性質に応じて無理なく作用させることが是とされます。
自然の流れに従い、その流れのなかで活きる戦術を駆使するわけです。
(p96より引用) その一方で、道教の根底にあるのは、「万物は流動的であり、適切な方法で働きかければ、最小限の労力で変化の方向に影響を与えることができる」とする考え方である。道教の教えでは、自身に多大なる労力をともなわない形こそ、われわれは外界の事象に対して効果的に影響力を行使していると言える。
さて今回も、著者が本書で「無為」の考え方にもとづく戦術として整理している9種を、覚えに記しておきます。
- 戦術10:釜底抽薪 相手の力の源となっている地点(物資供給ライン等)を攻撃して、その勢いを弱める
- 戦術11:関門捉賊 直接的な攻撃手段ではなく、間接的な行動を通じて、相手の動きを封じ込める
- 戦術12:偸梁換柱 相手の拠り所を打ち崩して、統率力を失わせる
- 戦術13:美人計 相手が欲しているもの、あるいは必要としているものをちらつかせて、相手の行動をコントロールする
- 戦術14:打草驚蛇 小規模な仮の攻撃を通じて、あらかじめ相手の強みや意図、予想される反応を知る
- 戦術15:趁火打劫 他社のトラブルを自社の好機と捉えて優位性を築く
- 戦術16:走為上 現在の力が十分でないときは、いったん退却して力を蓄える
- 戦術17:順手牽羊 相手の失敗にすかさず付け込み、支配力を築く
- 戦術18:仮痴不癲 わざと狂気を装って相手を油断させ、成功を収める可能性を高める
これらのなかで有名なのは「走為上(走ぐるを上と為す)」でしょう。
著者は、この戦術の適用例として、ジャック・ウェルチの「ナンバーワン・ナンバーツー戦略」を挙げています。
事業の撤退は確かに一面では「逃げる」ことですが、「逃げること=失敗」ではありません。それは、「選択と集中」のためのプロセスであり、将来の発展のための「有効な初動」なのです。
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