いつも利用している図書館の新着書リストの中で見つけました。以前から気になっていた本なので、早速予約して読んでみました。
テーマは「近親者のアルツハイマー病発症」というとても厳しいものです。著者は発病者の奥様の若井克子さん。
若井晋さんが若年性アルツハイマー病を発症されて東京大学を早期退職された年齢が、今の私と近いこともあり、本書で紹介されている晋さんと克子さんの闘病生活での数々のエピソードは、とても身近なものとして受け止めていました。
その中から、特に印象に残ったくだりを書き留めておきます。
(p153より引用) 「アルツハイマー病になると人格が変わる」と、言われるようです。でも私には、〈ちょっとちがう〉という実感がありました。
確かに晋には、空間認知や記憶の面で支障が出ています。そのせいで、できないことが増えたのは、ここまで長々と書いてきたとおり。
しかしそれは、生活の「技術」の問題にすぎないのではないか?
支障が出て困るから、人柄が変わったように見える、そういうことではないでしょうか。
だから、人間性が壊れるわけではないと思うのです。
むしろ、かえって深まるものもあるのではないか-。
たとえば晋の場合は、正義感、優しさ、謙虚さ。そして信仰も深まったように、私は感じていました。
克子さんの実感ですが、「引き算」によってより“本質” が浮き彫りになり際立つということは確かにあり得ることだと思いますね。
そして、本書を読み通して私の最も印象に残った晋さんの言葉です。
(p154より引用) 一人一人が自分の生き様に合わせて絶えず歩み続ける。そういう中 で私も生きてゆきたい。
講演が終わり、質疑の中で「人の価値」について尋ねられたときの晋さんの答えでした。
“自分の生き様に合わせて”、というフレーズに共感します。「病」もまた、自分の生き様なんですね。