いつも利用している図書館の新書の棚を眺めていて目についた本です。
朝日新聞が出している週末別冊版「Be」の「悩みのるつぼ」というコーナーでの連載を書籍化したものとのことですが、著者(回答者)が金子勝さんということで、ちょっと気になって手に取ってみました。
金子さんはマルクス経済学や財政学が専門の慶應義塾大学名誉教授です。
最近もメディアやSNS上で時事問題等についても積極的に発信されていますが、その金子さんが、どういう問い(相談内容)を選び、それにどう答えているのか大いに気になります。
また、回答にあたっては、関係書籍や落語の紹介もなされているとのこと。そのあたりも私の興味を惹きました。
で、読み終えての感想ですが、「やはり他の人の相談に回答するのは難しいんだろうな」と改めて痛感したというところですね。
相談されたことに回答するには、
①自分が一人称で体験していない事柄の背景や内容をきちんと理解し、
②そこでの相談者の悩みの本質を掴み、
③その悩みの真因を摘出して、
④それに対する具体的解決策を提示する
というプロセスを踏むわけですが、これらすべてのステップが、相談者の納得のいくものであることが求められます。
正直、私には到底無理ですし、金子さんの回答の中にも「これでは相談者の腹に落ちないのでは」といったものもそこそこあったのではと推察しました。
もちろん、「相談者が納得」できれば目的は達成されるわけですから、「私の納得」は必要条件ではありません。とはいえ、メディアに公開されたり書籍として出版されたりということになると、悩みの内容が普遍性が高まるほど “一般人” の受け止め方をある程度は意識した答えぶりも期待されそうですね。
まあ、ともかく、こういったいわゆる「人生相談」ですが、投稿者として「他人の意見も聞いてみよう」と能動的に動いている人の方が、自らの悩みを掘り下げもせず、日々惰性で過ごしている私ごときよりは、ずっと真剣に人生に相対しているのでしょう。
以前の私は、「こういった(プライベートな)ことを、よく他人に相談するなぁ」と思っていたのですが、どうやら、自ら顧みるべきは、むしろ「私」の方だということのようです。