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いつも聴いている堀井美香さんのpodcastの番組に著者の黒栁桂子さんがゲスト出演していて本書の紹介をされていました。
その内容がなかなか面白そうだったので、ちょっと気になって手に取ってみた次第です。
黒栁さんは、岡崎医療刑務所勤務の管理栄養士(法務技官)で、刑務所の炊場(炊事工場)で調理員である男子受刑者と一緒に日々の給食づくりに携わっています。
本書は、podcastでのお話のとおり、刑務所内の炊場で繰り広げられる受刑者たちとの共同作業の中での数々のエピソードをユーモラスな筆致で紹介したものです。
数々の興味深い話題の中から、特に私の関心を惹いたくだりをひとつ書き留めておきます。
黒栁さんの炊場での経験を通しての偽らざる思いの吐露です。
(p135より引用) 娑婆にはもっとおいしいものがある。ここを出たらいくらでも自由に食べられる。刑務所での生活なんて彼らにとっては黒歴史だろうし、ましてやムショメシなんて思い出したくもないだろう。そう思っていたけど、違うのかも・・・・・・。刑務所生活の中でも数少ないよい思い出として、彼らの印象に残るような給食を出したいと思った。
本書の中で黒栁さん自身語られているとおり、彼女と受刑者との接点は “炊場” という限定した場だけです。それ以外の時間の彼らとは接していません。その点でいえば、彼らの一側面しか知らないわけです。とはいえ、それでも炊場での姿は紛れもなく彼らの “実相” です。
本書での紹介のように、なかなか伺い知ることのできない “更生施設” としての刑務所の一側面を知る機会は、「刑事施設」の意義を考えるうえでもとても大切なものだと思います。
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