今年は、意識して誰でも知っているような「文学作品」を読み拡げていこうと思います。
はるか以前に読んだことのある作品もあれば、恥ずかしながらこの年になるまで読んだことのないものもあるでしょう。
まず、手に取ったのは、太宰治の代表作のひとつ「人間失格」です。
私も学生時代、太宰の作品はいくつも読んでいますが、この「人間失格」は初めてです。本書は、太宰としては晩年?の作、自ら命を絶つ直前に記したものとのこと、彼の自伝的小説と言われています。
この「自伝」という点から、太宰自らを語っているくだりをいくつか書き留めておきます。
(p24より引用) 自分には、あざむき合っているという事には、さして特別の興味もありません。自分だって、お道化に依って、朝から晩まで人間をあざむいているのです。・・・自分は、修身教科書的な正義とか何とかという道徳には、あまり関心を持てないのです。自分には、あざむき合っていながら、清く明るく朗らかに生きている、或いは生き得る自信を持っているみたいな人間が難解なのです。
周囲の人と素直な付き合いができない、そのために自分を隠し「道化」を演じるというのが主人公の生き方でした。
(p82より引用) ヒラメの話方には、いや、世の中の全部の人の話方には、このようにややこしく、どこか朦朧として、逃腰とでもいったみたいな微妙な複雑さがあり、そのほとんど無益と思われるくらいの厳重な警戒と、無数といっていいくらいの小うるさい駈引とには、いつも自分は当惑し、どうでもいいやという気分になって、お道化で茶化したり、または無言の首肯で一さいおまかせという、謂わば敗北の態度をとってしまうのでした。
さて、小説なのであまりくどくどと断片的な描写を引用するのはやめにしましょう。
久しぶりの太宰作品を読み終わっての感想ですが、正直なところ思いの外あっさりと読み通したというのが実感です。主人公の心理や行動において、自分と同一視できるところ、一般的にほとんどの人に当てはまるであろうところも少なからずありましたが、それ以上何か特別に感情移入するほどではなかったようです。
自分の感性が鈍感になっているのか、文学作品に対する鑑賞眼自体が著しく劣化しているのか・・・、ともかく、今年はもう少し意識して「文学作品」と付き合ってみましょう。
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