自らが需要を創造すべきとの気概を抱いていた本田氏は、「市場調査」についても一家言もっていました。
(p82より引用) 需要があるからつくるというのはメーカーではない。メーカーはパイオニアである以上は、あくまでも需要をつくり出すものである。だから未知にいどんでいるはずだ。未知な製品を大衆に聞いて歩いたって答えが出っこないではないか。
・・・大体、自分の商売のことを人に聞かなきゃいられないという人自体、市場調査をやってもむだじゃないか。
とはいえ、市場調査を否定していたわけではありません。
自ら世に送り出した製品の評価・反省そのものが「市場調査」だとの認識です。
(p83より引用) 私たちがいままで新製品をどんどん出してきているのは、過去の歴史の上に立ってものを考えてやっている。こういうふうにやったら、今度はこうやればなおいいだろう、ということで、毎日毎日が市場調査である。いろいろなクレームが来るだろうし、それからお客さんからこんなようなものはというような要求もある。それ自体が市場調査である。だから市場調査といって特別改まってやるのは私はあまり感心しない。
本田氏の考えは、「新しいものを創り出すことは未来をつくることであり、未来のことを人に聞いて分かるはずがない、そもそもそういうことを人に聞く姿勢自体がメーカーとしては許されない」というものでした。
しかし、反面、本田氏は「過去の調査」は重要視しました。
本田氏の技術者としての実証的思考の表れだと思います。
(p87より引用) 市場調査も過去を調べる上の市場調査は実にいい。私たちにほしいのは過去の市場調査である。・・・過去というものを理論的にみていないと、市場調査だけを信用してしまう。だからいままでの過去というものが市場調査の表をみる上に大きな役割をしているということをまず知らなければならないと思う。
これは、「過去は『確実な事実』として存在していた」ということです。この過去の事実の中に「将来につながる多くの教訓がすでに残されている」というのでしょう。
企業の中で、将来を見通し新しいものを創り出すという機能は、多くの場合「研究所」がもっています。
本田氏は「研究所」の姿勢についても一言コメントしています。
(p78より引用) 研究所はいろいろやらせておけば何か出てくるだろうなどと考える経営者もいるかもしれないが、それはだめだ。研究というものは必要がなければなかなかできるものじゃない。そのためには、営業なら営業がレーダーをきかして、何年先にこれを出してもらうとうちは優位になるというような、営業自体、経営自体の全体が見通しをつけて、研究所にまかせなければいけない。
将来の見通しは、市場と経営が見極めるべきとの考えのようです。
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