優れた企業も、その成長が永続するとは限りません。業績悪化に転ずることはむしろ珍しいことではありません。
好調だった企業が低迷期に入る原因として、ドラッカーは「五つの大罪」を示しています。
(p169より引用) 第一の大罪は、利益幅信奉である。・・・
第二の大罪は、高価格信奉である。これもまた、競争相手を招き入れるだけの結果となる。・・・
第三の大罪は、コスト中心主義である。・・・価格設定の唯一の健全な方法は、市場が快く支払ってくれる価格からスタートすることである。・・・
第四の大罪は、昨日崇拝である。昨日を重視し、明日を軽んじる。・・・
第五の大罪は、問題至上主義である。機会を放って問題にかかりきりになる。
第一から第三までの大罪は「価格(値付け)」についてのものですが、第四と第五は、「明日」や「機会」すなわち「未来」にポイントをおいた指摘です。
ドラッカーは、1993年、「すでに起こった未来」という論文集を世に出していますが、「未来」についてのドラッカーの思想や提言はそれ以前にも数多く発表されています。
たとえば、既に1964年の「創造する経営者」という著作では、ドラッカー流の「未来を知る二つの方法」が語られています。
(p112より引用) 一つは、自分で創ることである。成功してきた者は、すべて自らの未来を自ら創ってきた。・・・もう一つは、すでに起こったことの帰結を見ることである。そして行動に結びつけることである。これを彼は、「すでに起こった未来」と名づける。
誰でも等しく見ることができる「社会」の観察からドラッカー氏は未来を予見します。変化の兆しを鋭く掬い取るのです。
(p201より引用) 「重要なことは、すでに起こった未来を確認することである。すでに起こり、もとに戻ることのない変化、しかも重大な影響を持つことになる変化でありながら、いまだ認識されていないものを知覚し、かつ分析することである」
まさに、そういう社会変化を自らの学問対象に据えるドラッカー氏は、自らを社会生態学者と位置づけています。
(p200より引用) 「社会生態学は、通念に反することのうちで、すでに起こっている変化は何か、パラダイム・シフトは何かを問いつつ、社会を観察する。変化が一時的なものでなく、本物であることを示す証拠はあるかを問う。そして、その変化がどのような機会をもたらすかを問う」
社会の変化の兆しを捉えるためには、何に着目すればいいのか、どういう視点で、どういう視座から社会を見ればいいのか・・・。いくつかのヒントをドラッカー氏は示していますが、その具体的なひとつが「ノンカスタマー」という存在です。
(p86より引用) ドラッカーは、顧客であっておかしくないにもかかわらず、顧客になっていない人たちを「ノンカスタマー(非顧客)」と呼ぶ。・・・
「あらゆる組織にとって、最も重要な情報は、顧客ではなくノンカスタマーについてのものである。変化が起こるのはノンカスタマーの世界においてである」
以前紹介したドラッカー氏の至言に、「組織の目的は組織の外にしかない。顧客と市場である。」というフレーズがありますが、ドラッカー氏は「外からの視点」を非常に大事にしています。
「なぜ『ノンカスタマー』なのか?」、この問いを突き詰めて考え抜くことで、未来に対応した次なるアクションのヒントが導き出されるのでしょう。それは、既存製品・サービスの改善レベルのものもあれば、既存市場の限界・転換を示唆するものもあるはずです。
「ノンカスタマー」を追究することは、ドラッカーの言う「事業の目的」である「顧客の創造」に繋がっていくのです。
1999年の「明日を支配するもの」では、ドラッカー氏はこう指摘しています。
(p205より引用) 「自ら未来をつくることにはリスクが伴う。しかし、自ら未来をつくろうとしないほうがリスクは大きい」
蓋し至言です。
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