育成関係の章では、法隆寺などの解体修理を手がけ最後の宮大工棟梁と言われた西岡常一氏の著作が紹介されています。
西岡氏曰く、法隆寺が1300年もの間立ち続けられたのも、全部が不揃いの部材から組み上げられているためとのこと。
その説を受けて、権八氏は続けます。
(p248より引用) 均一の素直な正目の木材より、曲がりくねった癖だらけの木材のほうがずっと力があると語っています。
個性こそが組織力の資源なのです。この曲がった性根ややっかいな癖、すなわち頑固な個性を、巧みに統合し組み合わせることで生き生きとした組織力が生まれる。多種多様で不揃いな資源が満ち溢れていればいるほど、組織はシナジー(相乗効果)synergy effectを発揮するというわけです。
法隆寺の木組みは、「ひとそれぞれ、個性に富んだいろいろなメンバがその持ち味を活かし、その総体で素晴らしい成果を挙げる手本」として、記憶しておきたい事実です。
この本の後半は、こういった私たちを元気づけるフレーズが目白押しです。
たとえば、「前向きの無謀さ」について。
(p187より引用) 人は水泳の知識だけで泳げるようにはなりません。人は何度か転ぶ経験をして自転車に乗れるようになるのです。溺れそうな目に遭って水を飲んで苦しんで、初めて泳ぎを覚えるのです。ですから制止を聞かず闇雲に水に飛び込んでいく無垢で眩しい無謀さを、その若さと夢とロマンを、大切にしたいと私は思います。
また「反省」と「後悔」をテーマに。
(p187より引用) ああ、またやってしまったとか“反省”するのはいいのです。しかし、ああ、またやらなかったと“後悔”する人生なんてまっぴらだと思いませんか。
最後に、権八氏が紹介する梁塵秘抄に収録されている歌です。
(p292より引用)
遊びをせんとや生まれけむ
戯れせんとや生まれけん
遊ぶ子供の声聞けば
我が身さえこそ動(ゆる)がるれ
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