あまり最近の流行小説は読まないのですが、2010年本屋大賞受賞作品ということでちょっと気になったので手にとってみました。
時代物ではありますが、主人公は、江戸中期の天文暦学者渋川春海というあまりポピュラーとはいえない人物、さらにストーリーの軸は「改暦」という珍しいイベント。小説なのであらすじが分かるような内容のご紹介は控えますが、なかなか斬新な視点の作品だと思います。
(p307より引用) 時節を支配し、空間を支配し、宗教的権威の筆頭として幕府が立つ。朝廷の権威を低め、その分を幕府がことごとく奪い去る。・・・
当時「改暦」は、宗教・政治・文化・経済等を統制する大きな影響力をもつ一大プロジェクトでした。
(p309より引用) 今日が何月何日であるか。その決定権を持つとは、こういうことだ。
宗教、政治、文化、経済-全てにおいて君臨するということなのである。
この「改暦」という一風変わった舞台に加え、主人公を取り巻く登場人物も多彩、その性格設定もメリハリが効いていて時代物の活劇といったテイストです。
(p409より引用) 「今は、士気凛然、勇気百倍だ」
勝負に敗れた者とは思えない、すごいことを口にした。
度重なる挫折に挫けず、前向きに生きる主人公。読み終えた後に残る爽やかさ。
ひさしぶりに素直に楽しめた作品でした。
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