普段ならまず手にしないような扇動的タイトルの本ですが、レビュープラスというブックレビューサイトから献本されたので読んでみました。
本書で著者が紹介しているのは、「自分にとって望ましい行動を人にとらせる『文章』の書き方」です。
(p38より引用) 読む→言葉に反応する→想像する→行動を起こす
この一連のプロセスの中の“肝”は「想像する」です。対象に「状況を想像させる」ことが相手をして能動的に行動させるためのポイントだとの指摘です。
その観点から、著者が薦める「相手に対して何らかの行動を促すための文章の書き方」のTopsが「『書かない』3原則」です。読み手に「想像させる」のですから、すべて説明尽くされた一分の隙もないような文章、理路整然とした完全無欠な文章ではダメなのです。
(p88より引用)
原則1
「あれこれ書かない」
あれこれと内容を詰め込み過ぎた長文はすぐに飽きられる。ねらう結果を1つに絞り込み、あえて短文にすることで読み手の想像力を利用する。
原則2
「きれいに書かない」
美しいだけの文章、理路整然とした表面的な文章では心を動かせない。感情を込めた文章で、読み手の想像力を刺激し、感情を引き出す。
原則3
「自分で書かない」
自分の頭の中に答えはない。書く前の準備で、相手の読みたい内容、求めている言葉を探ること。それを提示できれば自ずと動いてくれる。
この中で難しいのは、やはり「原則3」ですね。
“どう書けばいいのか”ではなく“何を書けばいいのか”を知らなくてはならないのですから。さらに知らなくてはならないのは“相手の本心”ですから、これは厄介です。
相手の心の内を知ること、著者はその方法として「マインドリーディング」という手法を紹介しています。ただ、その具体的な方法はというと、インタビューで聞き出したり、facebookやtwitterの投稿から情報を得たりといった感じで、その説明はいきなりかなり粗くなってくるんですね。このあたり、ちょっと残念です。
さて、本書を読み通してみての感想ですが、まず、意思伝達のための簡単な作文の“Tips集”という視点でみると、それなりに具体的で納得感のあるコツやヒントが記されていると思います。
とはいえ、そこで実例として示されている個々の文章を、仮に私が受け取って読んだとすると、正直あまり良い印象は抱きませんね。もちろん個人的な好みに拠るところが大きいのですが、ちょっと馴れ馴れしくて相手に阿り過ぎているように感じます。
相手に快く自発的に(自分にとって望ましい)行動を起してもらうために、相手の心の中を推察して、心地よく感じるような文章を届ける、そういう「相手の気持ちを第一に慮ることが大事」だという著者の基本的な姿勢は、もちろん首肯できるのですが・・・。
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