久しぶりの哲学関係の本です。面白そうな切り口なので気になって読んでみました。
朝起きて寝るまでの1日の中から、「目覚める」「身支度をする」「通勤する」・・・といったような18のシーンを取り出して、そこに著名な哲学者の思想を紹介するかたちで哲学的な意味づけを加えた読み物です。
たとえば「本を読む」ことについて。
(p188より引用) 本は読まれることによって、そして読者の頭のなかで活性化されることによって、はじめて意味を得る。・・・その言葉を正しく読んで理解するためには、写真のネガみたいに、媒体(現像液)を通過させる必要がある。その媒体とはあなたの頭だ。・・・したがって本には、あなたの限界と同じだけ、限界があるということだ。つまり本は、意味を引き出すあなたの能力の範囲内でしか、意味をもたない。言い換えると、本を読むのは、他でもない、あなたの頭脳なのだから、あなたが得る意味というのはあなた自身の意味だということになる。
この考え方は論理的には正しいように思えるのですが、どうも首肯できないところが残ります。
この考えによると、いくら本を読んでも「頭脳(能力)」は発展・拡大しないということになるのでしょうか。直観的には、人は本を読むことによって、自らの外から新たな刺激を受け、それにより自らの能力を高めている、限界を拡げているというのが、私の素直な感覚です。
さて、本書ですが、日常生活のシーンを材料に哲学的解釈を加えるという点では面白い着眼だとは思いますが、私のような哲学初心者にはちょっと企画倒れ的に感じられてしまいました。
採り上げられている個々の哲学思想の解説自体の理解ができないので、この著者の試みの面白さを十分に理解することはできませんでした。残念です。
帯には「哲学入門」とあるのですが、この本を最初に読むのはちょっと適切ではないように思います。
ソクラテスと朝食を 日常生活を哲学する 価格:¥ 1,785(税込) 発売日:2012-09-21 |
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