会社の同僚の方に2冊をお借りしたのですが、そのうち1冊目です。
“太鼓持ち”=「幇間」は、立派な芸人です。
落語のなかでも「愛宕山」や「たいこ腹」にも登場し、三代目桂米朝師匠は噺のマクラで、「幇間ほど難しい芸はない」と語っています。刻々変化する主人の“気分”や場の“空気”を読み、それに瞬時に対応する、それもちょっと気の利いた台詞や仕草で・・・、これは並大抵の器量の人間でできることではありません。
本書は、会社の上司を「主人」と捉え、様々なタイプの主人ごとに35種類の「太鼓の持ち方」を指南した内容です。それも持つべきシチュエーションを指定し、そこでの叩き方を具体的な「台詞」という形で示しているので、極めて実践的?です。
いろいろな点で興味深い内容の本ですが、特に私がなかなか面白いなと感じた点を2・3、ご紹介します。
まずは、「基本フレーズ(正しい太鼓の持ち方)」に続いて紹介している「WARNING!」の解説です。
基本形をちょっと変化させたものでも、結果としての効果が大きく異なるということを、その微妙なニュアンスの違いを指摘することで説明しています。このあたりの繊細な?感性はなかなかです。
(p27より引用) WARNING1 「落差がすごいですよね?」
ギャップを日本語で言うと「落差」なのですが、この言葉だとどうしても「落ちている」感が出てしまいます。同じ意味でも使う言葉で印象が変わってしまうので、ここは「ギャップ」をデフォルトにしておきましょう。
もうひとつは、太鼓を叩く対象である「上司の類型化」です。
マニュアル上司、無計画上司、ワンマン上司、七光り上司・・・、それぞれごとに、どのタイプかを見分けるポイント、そのタイプごとの対処法を説明しています。
たとえば「空気を読めない上司」の対処法。
(p126より引用) 対処法
・絶対に伝えなければならないポイントがある場合は、口で説明するだけでなく紙にまとめたものを渡す。
・自分から発言させるのではなく、ほどよい感覚であなたから質問するなど、会話の主導権を握らせない。
・「直らないもの」ときっぱり割り切って対応する。
最後のアドバイスは秀逸ですね。
こういった対処法の適否についてはいろいろ異論があるかもしれませんが、対象を特定し、その対象ごとに適した対応をとるというプロセスは、とてもロジカルで体系的です。内容はともかく、課題解決の方法論としてはしっかりした骨格をもった本だと言えるでしょう。(ちょっと、ヨイショしてみました・・・)
そして、最後は、タイトルにもある「上司を転がす」という気概です。
上司を自らを取り巻く「職場環境」として位置づけつつも、それに受け身になるのではなく、自らの能動的なアクションの「対象」として捉えています。そして、「太鼓を持つ」という具体的行動を肯定・推奨しているのです。その方法の稚拙さや叩き方の好悪はともかく、自分の行動で現状を改善しよう、課題を解決しようとするこの合目的的姿勢は大事ですね。
とはいえ、このマニュアルどおりのことを私が実践するかといえば、ちょっとできませんねぇ。まずは、この歳になると、現実的に「太鼓を持つ対象」の方がほとんど見当たらないというのが最大の要因です。
私に必要なのは・・・、「正しい太鼓のもち方 同僚に阿る35の社交辞令」でしょうか・・・。
正しい太鼓のもち方 上司を転がす35の社交辞令 価格:¥ 1,008(税込) 発売日:2013-08-09 |
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