今流に言えば漱石Blogです。漱石の日記をそのまま収録したものなので当初から作品として意識して書かれたしたものではありません。
完成された文芸作品とは異なりますから、したがって自ずと感じ方・楽しみ方も変わってきます。
一冊の中に異なる時期の日記をいくつか採録されていますので、その時々たびごとの生身に近い漱石の姿を知ることができます。
その中で「修善寺大患日記」は、伊豆修善寺での闘病生活の日々の想いを綴ったものです。
このとき漱石は、一時危篤状態に陥ったのですが、その後の回復に向かう嬉しさが素直に伝わってきます。
(p167より引用) 九月二十一日〔水〕 昨夜始めて普通の人の如く眠りたる感あり。・・・
爽颯の秋風椽より入る。
嬉しい。生を九仞に失って命を一簣につなぎ得たるは嬉しい。
生き返る われ嬉しさよ 菊の秋(p173より引用) 九月二十六日〔月〕・・・始めて床の上に起き上りて坐りたる時、今まで横に見たる世界が竪に見えて新しき心地なり。
竪に見て 事珍らしや 秋の山
中には、「大正三年家庭日記」のように家庭内の不協和音をそのまま露にしているようなものもありますが、これは、奥様の方の言い分も聞かないとフェアではなさそうです。
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