新聞の書評欄を見て興味をもったので読んでみた本です。
「弱者」に焦点を当てた視点は斬新で、多くの新しい気づきを得ることができました。
自然界は「弱肉強食」の世界だと言われますが、現実的には「弱い」とされる生物も数多く生存しています。
(p53より引用) 弱者と呼ばれる生物は、数が多い。そのため、常に多くのオプションを用意し、多くのチャレンジをしている。だからこそ、環境の変化に対して強い。
数が多いと“突然変異”の可能性も高まり、多様な強みをもった個体が現出します。こういった種が、環境の変化による種の絶滅から逃れ生き残っていくのです。
また、生き残るための弱者の基本戦略のひとつに「ずらす」という方法があります。
(p64より引用) 条件が良いところは、競争が激しい。競争を避けて、「ずらす」ということは、少し条件の悪いところへ移ることなのだ。
弱者にとって、チャンスは恵まれているところにあるのではない。少し条件の悪いところにこそ、チャンスがあるのである。
場所をずらす、時間をずらす・・・、もちろん、ずらした環境で生きていくためには、知恵と工夫が必要です。
この知恵と工夫という点では、第八章「強者の力を利用する」で紹介されている数々の“擬態”の例は、とても興味深いものでした。
コノハチョウやナナフシといった有名なものはもちろんですが、“アリグモ”には仰天です。頭胸部にくびれをつけたり、8本の足のうち、前2本を触角に似せたりと、ここまでやるかという感じですね。どういうプロセスで“擬態”が完成されるのか、自然界・生物界の大いなる不思議と言わざるを得ません。
さて最後に、本書の「あとがき」での生物の進化、その中での人類の立ち位置の総括は目から鱗の指摘でした。
(p168より引用) 地球に危機が起こるたびに、命をつないだのは、繁栄していた生命ではなく、競争を逃れ僻地に追いやられていた生命だったのである。
両生類の祖先海から陸に上がったのも、より強い生物の生活圏が汽水域から淡水域へと拡大して来たことに対応した「生きるために逃れ逃れていった結果」なのだという考えです。
(p171より引用) 人類の進化をたどれば、私たちは常に弱者であった。弱者は常にさまざまに工夫し、戦略的に生きることを求められる。そして、他の生物がいやがるような変化にこそ、弱者にチャンスが宿るのである。
変化を受け入れその困難を乗り越えたものは、生存競争を勝ち抜くことのできる「たくましき弱者」なのです。
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