(イノベーションのジレンマ(クリステンセン))
製品のライフサイクルについては、従来からいろいろなモデルが提唱されています。たとえば、
(p228より引用) ウィンダミア・アソシエーツは、「購買階層」という製品進化モデルを作成した。このモデルは、機能、信頼性、利便性、価格の四段階を一般的なサイクルとしている。・・・購買階層のある段階から別の段階への移行を促す要因は、性能の供給過剰である。・・・
このような機能から信頼性、利便性、価格へと至る、競争地盤の進化のパターンは、これまでにとりあげた市場の多くにもみられる。実際、破壊的技術の重要な性質は、競争地盤の変化の先触れであることだ。
破壊的技術は、この競争地盤内のポジションや競争地盤間の移行の要因のひとつだと言えます。
競争地盤内の影響という点では、
(p230より引用) まず、主流市場で破壊的製品に価値がない原因である特性が、新しい市場で強力なセールス・ポイントになることが多い。
また、競争地盤間の移行への影響という点では、
(p230より引用) つぎに、破壊的製品は、確立された製品に比べ、単純、低価格、信頼性が高い、便利などの特徴を備えていることが多い。
破壊的技術は、競争地盤内でのポジションを高め、それを踏み台に上位市場に参入し、その市場の「購買階層」を変化させるのです。
さて、このような破壊的技術の特性の理解を前提にして、本書の第9章で破壊的技術の活かし方に触れています。
ここでは、電気自動車を潜在的に破壊的技術だと想定し、電気自動車普及に向けた具体的マーケティング戦略を策定する際の3つのポイントを記しています。
(p251より引用) 第一に、電気自動車は主流市場の基本的な性能要求を満たしていないため、当然ながら、電気自動車は最初は主流の用途には使えないことを認める。
ということは、破壊的技術の適応先としては(逆に)主流以外の用途を探せばいいのです。
(p252より引用) 第二のポイントは、電気自動車の初期の市場がどのようなものになるかは市場調査ではわからないことだ。
この点は、本田宗一郎氏が「アンケートをとるのは無意味だ」と話されていた姿勢に通じるものがあります。破壊的技術は、顧客も理解していないわけですから、マーケットに聞いても無駄です。
開発側で知恵を絞るか、ともかく、何か市場に出してみてその反応を見るとかの方法しかありません。
そういう意味で、破壊的技術を扱う場合は、次のような試行錯誤のプロセスを当初から意識して取り組む必要があるのです。
(p253より引用) 第三のポイントは、この事業は既知の戦略を実行するためではなく、学習のための計画である必要があることだ。・・・過ちをおかしたら、できるだけ早くなにが正しいのかを学ぶように計画する必要がある。・・・二回目、三回目の挑戦のために資源を残しておく必要がある。
ただ、そもそも、ある技術が「持続的技術」か「破壊的技術」か、その見定めが肝になります。
どうも「破壊的技術」というのは、「結果」のような感じもします。既存市場に新技術を搭載した製品が参入した際、それが、従来の当該市場の許容機能を満たしていて、かつ、従来の製品にない「新たな価値」を有していた場合、それが(結果的に)「破壊的」になるということです。
だとすると、顧客が「新たな価値」を評価するかどうかの読みが決め手になります。
結局は、やはり「顧客」に立ち戻るのです。
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