第五章「激変する『メディア』にどう対処したらいい?」の章で、姜尚中氏は以下のようなアドバイスを贈っています。
(p110-111より引用) 昨日と同じように今日があるし、今日と同じように明日が続くだろうと信じられているわけです。これをテレビで確認するということです。つまりテレビというメディアは“日常性を再生産するボックス”なのです。
しかしテレビが本質的にそういう保守的なメディアであるとするならば、テレビを見て日常性の構造を疑ってみる、という発想はなかなか生れてこないだろうし、またテレビによって、現状を変えていこうというインセンティブ(やる気や誘因)を作り出せるかというと、それも難しいと思います。
だからこそ、やっぱり違う媒体、たとえば活字メディアのようなものが必要になってくるのだと思います。・・・複数のメディアとアクセスできる状況を自分自身で作っておくこと。それが今、メディアの受け手には必要とされているのではないでしょうか。
メディアとしての「テレビ」の問題は、昨今話題になっている情報番組の「捏造」に象徴的に表れています。今回のケースは、番組提供者と受動的視聴者双方の無思慮・無分別な姿勢の合作です。
他方、テレビ等のオールドメディアに代わり急激に人々のあいだに浸透しているのが「インターネット」です。
インターネット上で新聞やテレビ等と同等の情報を入手することが可能になりつつあります。さらに、パーソナライズされたポータルやRSSの利用により、自分の興味・関心に応じた情報の選別・取得も容易になってきました。
こういう状況についても、姜氏は課題を提起しています。
(p115より引用) インターネットは密閉化されたメディアですし、携帯電話などのように、これほど個別化されたツールもない。自分の興味のあるニュースだけを各々が見ているうちに、ほかの人との共通の認識や問題意識がなくなってくるという危険性が高いと思います。
逆説的ではありますが、自分の関心にかかわらずいろいろな情報が提供されるという意味で、テレビや新聞の存在価値が見直されるかもしれません。
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