OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

三体(三部作) (劉 慈欣)

2021-09-15 10:47:28 | 本と雑誌

 

 知人の読後感でも評判がよく、現代中国最大のヒット作ということだったので手に取ってみました。

 中国人作家によるSF小説は初めてです。
 当然「ネタバレ」になるようなコメントは控えますが、評価の高い「翻訳小説」は、本質的な原作の素晴らしさに加えて、翻訳者の筆力・表現力が秀逸ですね。本作品でいえば、こんな表現の箇所がそれにあたります。

(p323より引用) 文潔の記憶の中で、人生のこの時期はまるで他人事のようだった。ひとひらの羽毛が家の中に舞い込むように、見ず知らずの他人の人生のひとコマが、自分の人生に舞い落ちてきた気がした。

 さて、本作品、「三体」が450ページ、「三体Ⅱ 黒暗森林」が上下合わせて680ページ、「三体Ⅲ 死神永生」が上下合わせて880ページ、三部作トータルで2000ページ。正直、読み通すのはかなりの苦行でした。長かったです。

 読み始めたのはいいのですが、第1作目の「三体」は冗長な描写も多くメリハリやスピード感が感じられませんでした。とはいえ、途中で止める決断もつかず、第2作目にトライしたのですが、1・2作併せて何とか形にはなりましたね。2作目の最後、山場のシーンでようやくスペクタクル感が出てきました。

 そして、第3作目、これはどうでしょう。“次元”を操ったSF的な舞台設定は優れていると思いますが、前2作に比較して登場人物どうしの絡みのウェイトが増えてくると、人物描写、背景も含めた動きや心情の書き込み方は今ひとつだと感じてしまいました。その点が「物語」として入り込めなかった最大要因ですね。

 ラストはこういう形でいいのですか。極限まで究極を追求した構想は驚きではありますし、これだけの大作の結びとしては相応しいとも思いますが、正直なところ、私にはしっくりとは収まらなかったですね。精緻な理論が先に立っているわりには、描かれている具体的な事象(人の行動)は少々雑にみえ、せっかくの壮大なスケールが矮小化してしまった印象を抱きました。

 さて3部作を読み通してみての感想です。
 確かに、破格のスケールと多彩な科学的知見で圧倒的な質感をもった作品だと思いますが、正直なところ、私の好みには合いませんでした。

 大長編ですからいくつかのパートで構成しているのですが、そのためか、ひとつの大きな物語と捉えたとき、ここが最高潮という“クライマックス”がはっきりしません。
 “クライマックス”の主役は「事象」ではなく、やはり「人」だと思います。もちろん各パートごとに“主人公”は登場していますから、その意味では、主人公のプロットが私にとってあまり魅力を感じなかったということかもしれません。
 細かなところでは、それぞれのパートをつなぐのに「人工冬眠」という時間を跳躍する技(タイムトラベル)を使っているのも安直な印象を受けました。

 とはいえ、確かに型破りな発想力や構想の緻密さは素晴らしいものがありました。
 大いに話題になっている作品ですから今後「映像化」の話は出てくるんでしょうね。シナリオとしても映像としても、どう料理されて登場するのか楽しみです。

 

 

 

 

 

 

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〔映画〕アンフェア the end

2021-09-15 10:11:48 | 映画

 
 文字どおり「劇場版」シリーズの完結編、第3作目です。
 
 このシリーズ、続けて観てみましたが、やっぱり版を重ねるたびにプロット、特に登場人物の性格づけに無理が出てきて急速に劣化しましたね。エンターテインメント作品としても楽しめるレベルではなかったと思います。
 第2作目から佐藤浩市さんが登場したのですが、彼が演じた人物の位置づけが今ひとつしっくりこなかったのがひとつの要因だと思います。

 それもこれも根っこは、非現実的な“闇組織” の存在をベースにした物語であることによるのでしょう。組織というのであれば、その目的とか構成をしっかり構築して「敵」イメージを明確に描いたうえで、途方もない巨悪に挑む孤高の主人公といったコンセプトをもっと愚直に貫いて欲しかったですね。

 どうも “意外な展開” の作り込みに拘り過ぎたようです。それは行き過ぎると、却って興覚めしてしまいます。

 

 

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〔映画〕アンフェア the answer

2021-09-14 08:14:29 | 映画

 
 「劇場版」の第2作目です。
 ストーリー的には1作目と完全に連続しているので、忘れないうちに観ておくことにしました。
 
 前作にも増して何でもありの展開ですね。それらしい伏線も仕掛けられていないで、後になって次々に都合のいいどんでん返しが待っています。結局、主人公を取り巻く人物には「善人」はいなくなってしまうのでしょうか。

 ラストも次の作品が制作されることを前提としたシーンで終わっていますが、興行的には仕方がないですね。 
 
 2作目も観てしまったので、3作品目にも挑戦しましょう。TVのスペシャル版としては、スピンアウト作品も3作あるそうです。

 

 

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〔映画〕アンフェア the movie

2021-09-13 10:52:33 | 映画

 
 篠原涼子さん主役で人気を博したドラマシリーズの「劇場版」です。
 
 テレビドラマの方は観ていなかったのですが、タイトルは耳にしていたので映画の方はどんなものかと興味を持って観てみました。
 
 一匹狼的な主人公が登場し、組織内の巨悪と対決する刑事ものにはありがちなプロットです。ストーリーもリアリティはありませんが、その分エンタメに徹しているのでしょう。
 
 映画としては全部で3作品あるようなので、もう少し付き合ってみようと思います。

 

 

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〔映画〕シャレード

2021-09-12 09:39:22 | 映画

 
 久しぶりに、オードリー・ヘプバーンの出演作を観ました。
 
 さすがの存在感ですし、相手役のケーリー・グラントもうまくバランスをとって彼女を引き立てていたように思います。
 
 ストーリーも適度にスリリングですし、最後のサプライズシーンも粋ですね。こういったテイストの作品は女優さんの持つ魅力とのマッチングで生まれるもので、最近ではなかなかお目にかかれません。ヘプバーンならではの映画ですし、エンターテインメント作品としては素晴らしい出来だと思います。
 
 あと、蛇足です。ヘプバーンが追手から逃げるシーンがいくつかありますが、あの派手なジバンシィの衣装だと目立ち過ぎて、追手は絶対見失わないでしょうね。

 

 

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こころの散歩 (五木 寛之)

2021-09-11 09:37:51 | 本と雑誌

 いつもの図書館の新着書リストの中で目に留まった本です。

 このところの五木寛之さんのエッセイは“晩年の生き方”といったテーマのものが多く、ちょっとワンパターン化されてきているようにも感じますが、それでもやはり気になります。
 本書は比較的最近の「週刊新潮」に連載された小文を中心に再録したものとのことです。

 いつものようにちょっと印象に残ったくだりを書き留めておきます。
 今回はひとつだけ、「逝きし人の歌声」というタイトルのエッセイから、盟友野坂昭如氏を語ったフレーズです。

(p99より引用) 野坂昭如がいる、ということで私は仕事を続けてくることができたとあらためて思う。
 そういう存在にめぐまれたことは、私の幸せであった。彼と反対の方向へ歩いていけばいいのだ、と自分に言いきかせていたからである。

 五木さんは私の父親世代ですが、私もこの歳になると、五木さんが描く時代感とテンポが心地よく感じるようなってきました。これからも五木さんのエッセイが出るたびに手に取るでしょう。

 

 

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〔映画〕あさひなぐ

2021-09-10 09:39:21 | 映画

 
 この作品もコミックが原作です。
 
 原作となっているコミックは結構巻数があるもののようですが、映画化されたのはその “さわり” 部分だけです。
 そのせいもあってか、物語という点では全く中身がありません。「乃木坂46」の中心メンバーが出演しているのが唯一の売りの作品ですね。
 
 なので、そもそも乃木坂46のファンでもなんでもなく、所属メンバーの名前もせいぜい1・2名程度しか知らない私のような人間にとっては、選択誤り以外の何物でもありませんでした。

 

 

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〔映画〕ターミネーター2

2021-09-09 10:45:02 | 映画

 
 近いうちに「ターミネーター:ニュー・フェイト」を観ようと思っているのですが、位置づけとしては「ターミネーター2」の続編とのことなので、久しぶりにその「ターミネーター2」を観直すことにしました。
 
 もう何度も観ているはずなのですが、ストーリーはあまり記憶に残っていなかったですね。ラストの「溶鉱炉」のシーンは、流石にインパクトMAXだったので覚えていましたが。
 
 この作品、CGによる特殊映像もこれ見よがしではなく、スタントによるアクションシーンも緊迫感があって、エンターテインメント作品としてはかなり優れた部類だと思います
 アーノルド・シュワルツェネッガーの出演作は正直 “玉石混交” ですが、この作品はいいですね。

 

 

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〔映画〕アナライズ・ミー

2021-09-08 09:02:48 | 映画

 
 ロバート・デ・ニーロは私の好きな俳優のひとりですが、本作品は、彼が出演した1999年制作のコメディ映画です。
 コメディといっても、彼の得意な「マフィアもの」。
 
 ロバート・デ・ニーロはシリアスな役もコメディタッチの役も見事に演じますね。シリアスなイメージでベースをしっかり作っているので、対照的なキャラクタにメリハリがついてそちらも際立つのだと思います。
 
 マフィアのボスと精神分析医というプロットはなかなか変わっています。捉えようによっては “B級コメディ映画” とも言えるでしょうが、芸達者な役者さんのおかげで結構楽しめました。

 

 

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〔映画〕コンフィデンスマンjp 運勢編

2021-09-07 09:42:33 | 映画
 長澤まさみさんの定番シリーズものですね。
 この作品は「映画」ではなく、コンフィデンスマンjp の「TVドラマスペシャル版」です。
 
 そもそもプロット自体が “騙し騙され” なので、ストーリー的には何とでも恣意的に操作することができます。となると、どこまでが意図された仕掛けなのかという意外性や、起こるエピソードの想定を超えた関連性が楽しみの中心になります。その点では、最後のラーメン屋のシーンは、そこまで伏線を張っていたかとちょっと驚きました。
 
 あと、キャスティングも良かったと思います。北村一輝さん、中山美穂さん、広末涼子さんと、こちらも豪華なだけではなく、芸達者でしっかり役柄にマッチしていましたね。

 

 

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ブルシット・ジョブ―クソどうでもいい仕事の理論 (デヴィッド・グレーバー)

2021-09-06 11:15:57 | 本と雑誌

 このところ“仕事”に関係するような本はできるだけ読まないようにしているのですが、かなり話題になっているようなのでひととおり目だけでも通しておこうと手に取ってみた次第です。

 “ブルシット・ジョブ”というのは「くだらない、どうでもいいような仕事」のことで、著者はこう定義しています。

(p27より引用) 最終的な実用的定義=ブルシット・ジョブとは、被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態である。とはいえ、その雇用条件の一環として、本人は、そうではないと取り繕わなければならないように感じている。

 ひとつの「作業」という単位でブルシットなものもあれば、ひとつの「業務」の場合もあります。

(p230より引用) わたしの控えめな見積もりでは、銀行の六万人のうちの八〇%が不必要でした。かれらの仕事は一個のプログラムで完全に代行できるものであるか、そもそも特定のブルシットなプロセスを可能にするないし複製するようプログラムが設計されているがゆえに、まったく不必要なものでした。

 さらには、「会社」そのものが、「業界」自体がブルシットなものさえあるといいます。特に昨今の「金融ビジネス」にはその類のものが多くみられるというのは首肯できる主張でした。

(p222より引用) (融資をおこなうことで)マネーをつくりだし、それをたいてい極端に複雑な方法であちこちに動かし、取引をするたびに少しずつあがりをいただくのである。その結果、銀行職員はしばしば、金のなる木から金をむしり取るために意図的になにも教えられなかった会計事務所の職員のように、この事業自体が無意味であるという気持ちを抱いたままの状態となる。自分の所属する特殊な銀行が、いったいなんのために存在しているのか理解すらしていない銀行員は、おどろくほどの数にのぼる。

 著者は、ブルシット・ジョブを5つの類型に整理しています。

(p50より引用) 調査のなかで、わたしはブルシット・ジョブを五つに分類することが、最も有益だと考えるようになった。わたしは、これらを、取り巻き(flunkies)、脅し屋 (goons)、尻ぬぐい (duct tapers)、書類穴埋め人 (box tickers)、タスクマスター(taskmasters)と呼ぶつもりだ。

 これらのブルシット・ジョブを生み出す原因についても詳しく解説されているのですが、その中のひとつに、私がスッと理解できたコンセプトがありました。「インターナル・マーケティング」です。

(p249より引用) 社外へのマーケティング活動の効果的実行のためには社内全体のマーケティングに対する意識を高めることが重要であるという発想から、経営者から一般社員まで、社内の人たちにむけておこなうマーケティングのこと

 「(社内)マーケティング活動」に限らず、これに類する営みはどんな企業でも見られますね。いわゆる“根回し”もそのひとつです。多くの根回し自体がブルシット・ジョブであるのと同時に、必要性が低いにも関わらず根回しをされるだけの立場の人もブルシット・ジョブだと言えるでしょう。

 さて、本書を読み通しての感想です。
 論考の対象が欧米の職場であることから、今、在宅勤務の進展に伴い日本でも議論されている「JOB型雇用」をベースにした労働環境の実態の紹介や解説がされているのは興味深かったですね。(ブルシット・ジョブといえども、何らかの「ジョブディスクリプション(職務記述書)」は準備されているんですね。その準備作業自体もブルシット・ジョブですが)

 ただ、正直、とても読みづらい本でした。
 翻訳によるところもあると思いますが、おそらく原文自体のせいでしょう。もっとシンプルに分かりやすく論を進めることもできたはずです。私自身の理解力不足に加え、欧米の様子に疎いこともあり、著者による例示や暗喩がかえって分かりにくさを助長していました。
 面白いテーマの著作だっただけにちょっと残念です。

 

 

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〔映画〕SPACE BATTLESHIP ヤマト

2021-09-06 10:45:51 | 映画

 
 1970年代、一世を風靡したアニメ「宇宙戦艦ヤマト」の実写版です。
 
 私も、10代のころ「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」をリアルタイムで劇場で観て、正直とても感動したのを覚えています。
 
 本作品は、そういった「劇場版アニメ」の印象的なシーンを織り込んでいて、ところどころ懐かしい感じも抱きました。
 ただ、正直に言って、この実写版はダメでしょう、「大コケ」の出来だと思います。
 
 キャスティングや演出についてもどうかという点は多々ありますが、それより何より致命的なのは、「森雪」のキャラクターを大きく変えてしまったことですね。「森雪」の原作での役割を完全に無視してしまいました。これですべて台無しです。

 実写版での古代進と森雪との絡みは、いきなりの展開でとても安っぽく違和感満載になってしまいました。ラストシーンも最悪ですね。

 

 

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〔映画〕トランスポーター

2021-09-05 09:41:03 | 映画

 
 これはという映画がなかったので、何年かぶりに「トランスポーター」を観ました。
 
 こんなストーリーだったかと思いましたが、軟派的なシナリオはフランスとアメリカの合作だったからなんですね。アクション映画としては、かなりもの足りなさが残ります。
 
 2002年製作ということなので、ジェイソン・ステイサムの初期のころの作品です。さすがに顔立ちは若いです。

 

 

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〔映画〕覆面系ノイズ

2021-09-04 09:49:50 | 映画

 
 これも「コミック」が原作の映画です。邦画ではこのパターンもひとつのお決まりジャンルですね。
 
 これだけたくさんの同じような作品が並んでくると、さすがに玉石混交、ストレートに言えば「乱造」状態になりますね。その点では、この作品はかなり厳しい出来でした。

 「音楽(バンド)」が大事なモチーフなので、やはりその部分での「ホンモノらしさ」はしっかりと堅持して欲しかったです。自演とのことなので、若手俳優のみなさんのガンバリは大いに評価されるべきですが、やはり音楽のインパクトは物足りないものがありました。
 
 これは出演者の責任ではなく、キャスティング時点での甘さだと思います。

 

 

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〔映画〕四月は君の嘘

2021-09-03 10:30:54 | 映画

 
 原作は「少女漫画」ではなく、「月刊少年マガジン」なんですね、意外です。
 
 登場人物の配置は “鉄板の4人” で、ひとりも悪人がいないタイプの王道パターンです。
 
 ともかく、広瀬すずさんの映画でしたね。確かにこの主人公のキャラクタは、同世代の女優のなかでも彼女がベストマッチでしょう。
 こういった青春系ティーンエイジャー映画では出色の存在感を発揮していますね。これから数年後、シニア世代になって求められるものが変わってくると、それをこなすハードルは高いとは思いますが、期待したいものです。

 

 

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