せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

台風被害で、これからの住まいをどう考えるか?

2019年09月13日 | ものづくり


台風15号の被害に遭われた皆様には
お見舞い申し上げます。

断水や停電とお困りの世帯も未だ多くおられて
連日のニュースには、胸が痛みます。

私自身、木造住宅の耐風等級の目安にもなっている
500年に1度発生する暴風(1991年19号台風)を
学生時代に熊本で経験しました。

倒木被害で、通行止めで家に帰れず
帰宅ができても、屋根の雨漏り、
断水、停電の生活が続きました。

家族には、仕事場でガラスが割れても
頭に怪我を覆った者もいました。

駐車場の倒木で、車がぺしゃんこになったり。
商店街は、看板が飛び散っていました。

本当にあの時は、恐ろしい被害でした。

この時から、大型台風が近づくとなれば、
前の晩にバケツから家中の鍋に水をため、
浴室、洗濯機の中まで水を満タンにし、
懐中電灯を枕元に寝ました。

日常ではなくなる自然災害。

ですので、被災した方々の
 その脅威にさられて、復旧のめどが立たず
いつまで続くのか分からない
不安を抱えるお気持ちが、手に取るようです。

一刻も早い復旧を願います。

自然災害が起きると、その度に
建築のものづくりの方向性を考えさせられます。

熊本は、台風対策で昔から瓦の屋根が主流でした。
軽い屋根では、簡単に飛ばされるからです。

ところが大地震を経験すると、少しでも屋根を軽くと
金属に取り替える住まいもありました。

一体どちらがいいのでしょうね?
皆さんはきっと悩まれると思います。

いろいろな工夫で、瓦も進化し、防災瓦というものが出来ています。
金属でも、飛ばないような納めにもなっています。

しかし、いずれも、ニュースで流れた被害のように、
鉄塔が倒れてきたというような状況には対応できませんね。
最近の竜巻も気になります。

だからと言って、軒のない(日除けのない)空調機に頼る(電気に頼る)
エコではない住まいが良いとも思えません。

私が社会出る頃は、建築は格好良く見せるために、
軒先を出さないか
出すならキャンチ(持ち出し)の住まいが、
建築の専門誌を賑わせてきました。

ガラス張りも多いですね。

私は、この学生時代の台風経験で、
こうしたものづくりには、とても抵抗がありました。

それが社会に出て
カッコイイとされるのが主流で、
とても戸惑いました。確かに、見た目は美しいのですよ。

これまでの日本の暮らしと
自然対策を生かした住まいは、「古くて、ダサかった」のです。
何事もない時には。。。

しかし、こうして災害を体験してみると
古来からの知恵と、最新技術は、
どちらも取り入れるべきではないか
というのが、私の考えです。

そこで、熊本の新築の住まいでは、軒先に柱を設置し、
その柱もしっかりと金物で土間や基礎とつなげています。

そうすることで、屋根の構造の吹上を防ぎつつ、
夏の暑さ対策の軒先を、安心して延ばせるからです。

都心部では、土地が狭く、建ぺい率(家の投影面積の土地への割合)
の制限で、柱をどうしても落とせない制約が出ることもあります。

せめて、玄関ポーチだけは、傘がさせて家から出られるように、
あるいは帰ってきて傘をたたんで濡れないように、、、、。

建主さんには、面積に入っても、
作りましょうと説明しています。

私たち建築屋は、どうしても流行や
雑誌に掲載されよう格好良いものを
作りたがる傾向にあります、笑。

若き頃は、私もそうだったように思います。

今は、自分自身の手掛けた住まい建築が、
災害被害を最小限にとどめてくれるような
ものづくりでありたいと切に思います。

修復現場では、耐震という力での抵抗ではなく
しなやかに地震の揺れを吸収する伝統構法の素晴らしさも
噛みしめました。

家族のケアが発端だったとはいえ、
故郷、熊本に帰ってきた意味も、
こうしたものづくりの原点を
もう一度再確認することだったのかもしれません。

これからも、考え続け、研究や、情報収集を怠らず、
建主さんの懐の許す限りの
最大限の知恵と工夫を実現していきます。

中秋の名月に、誓った夜です。