この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

ふちなしのかがみ。

2009-07-07 22:12:26 | 読書
 辻村深月著、『ふちなしのかがみ』、読了。

 著者初のホラー系短編集。
 これまでファンタジックなミステリーで遺憾なくその力を発揮してきた著者であるが、出来栄えや如何に?

 一編目の『踊り場の花子』。
 これが何つーか、めっちゃめちゃ怖ぇ。
 学校の怪談という『世にも奇妙な物語』でありそうなお話ではあるのだけれど、そのありがちなお話が辻村深月の手にかかるとこうも怖いものに仕上がるのか。
 ラストの一行も冴えている。
 さすがは辻村深月、ホラーもお手のものなのか、と甚く感心した。

 と手放しに褒められたのも一編目のみ。
 続く『ブランコをこぐ足』、『おとうさん、したいがあるよ』ははっきりいって意味がわからん。
 自分の読解力に問題があるんかいな?と思って読み直してみたけど、やっぱわからん。
 わからなかったのは自分だけではないようで、ミクシィの辻村深月コミュでも『おとうさん~』の意味を教えて♪っていってる人が少なからずいた。
 辻村深月ファンでわからんなら、辻村深月ファンでなかったらさらにわからんだろうな。

 表題作の『ふちなしのかがみ』はまぁ及第点かな、ってところ。
 でも辻村深月の新作に及第点をつけるような作品は求めちゃないんだよね。
 
 五編目の『八月の天変地異』は正直イマイチだった。
 空想の中の友人が現実に現れるというプロットは嫌っていうほど目にしているので、そこに何かしら新機軸か、作者なりの一工夫がなければいけないと思うが、この作品にはそういったものがない。
 ファンタジーなのか、ファンタジーじゃないのか、よくわからない結末もこの場合“逃げ”だと思う。
 読み終わってもやもやした。
 同系統の作品であれば乙一の『はじめ』の方がよほど優れていると思う。

 新作を発表するたびに自分の中で評価を上げてきた辻村深月であるけれど(世間的にはイマイチ評判の悪い『太陽の坐る場所』も自分的にはよかった)、初めて「あれ?こんなもの?」と思ってしまった。
 だからといってファンをやめようとか、新刊を買うのをやめようとか、そういうことは全然思わないけどね。
 辻村深月、全般的には非常にハズレの少ない作家だと思います。
 面白い作家はいないかとお探しの方がいらっしゃったら、是非彼女のデビュー作『冷たい校舎の時は止まる』を読んでみて下さい。
 時が止まった異空間で繰り広げられる驚天動地のミステリーです。
 面白いですよ。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする