この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

改めて原作の良さを再確認した映画『予告犯』。

2015-06-13 23:29:36 | 新作映画
 中村義洋監督、生田斗真主演、『予告犯』、Tジョイ久留米にて6/12鑑賞。2015年23本目。


 映画『予告犯』を昨夜レイトショーで観てきました。
 原作は好きでしたから、本当は前売り券を購入して公開初日にでも観たかったのですが、『予告犯』の前売り券はなぜか劇場指定のタイプでした。どこの映画館で観るのか、決めきらなかった自分は購入を断念、レイトショーで観ることにしました。
 些か感慨深いものがありましたよ。
 原作の1巻を手に入れるのは結構大変でしたからね。
 旅先で手に入れようとしたので、本屋を三軒ぐらい回りました。
 何しろ連載がジャンプ改という現在では廃刊した、当時でも集英社刊としてはマイナーな雑誌でしたし、作者も決して知名度は高くないので、入荷冊数が少なかったのだと思います。
 手に入れたときは「やった!」と内心小躍りをしたものです。

 原作の『予告犯』はなぜ彼らは劇場型インターネット犯罪に手を染めたのか、という動機を巡るミステリーを縦軸に、様々な時事ネタを絡めた、非常によく出来た犯罪ドラマです。
 まるで精緻なパズルの如く、無駄なピースもなく、また余計なピースも必要としない、完成度の高いシナリオでした。

 なので、原作をそのまま映像化すれば優れた社会派ミステリー映画が出来たはずなのですが、映画は様々な事情により改変され、残念ながら原作ほどの完成度というわけはいきませんでした。

 原作では主人公の奥田と女刑事である吉野は最後まで直接対峙することはありません。
 だからこそラストではカタルシスを得ると言ってもよいのですが、映画では二人を同じ画で捉えたかったのでしょう、中盤で唐突に二人の追いかけっこが始まります。
 刑事である吉野が応援も呼ばずに一人で奥田を追うというのも変ですが、(運動が苦手そうな戸田恵梨香扮する)吉野が(運動が得意そうな生田斗真演じる)奥田を走りで追い詰めるというのはちょっとありえないよな、と思ってしまいました。普通に奥田がぶっちぎってしまいそうなものですけどね。
 
 原作ではシーシェパードをモデルにした反捕鯨団体が登場するのですが、映画では政治的、資金的な理由でそのエピソードもすべてカットされています。そのため主人公の身代わりになるネットカフェ店員の動機がかなり希薄になっています。原作を未読で映画を観に行った人は共感出来なかったのではないでしょうか。

 ラスト、主人公たちが海岸で最後の宴を催すのですが、奥田は、仲間の一人の「回転していない寿司を食べたい」という願いを聞いて、スーパーのパック寿司を買ってくるんですよね。そんな勘違いをする奴はまずいないでしょう。
 ここは単純に「高級寿司は無理だけど、代わりにパック寿司を買ってきた」みたいな台詞に変えれば済むことだとは思いますが、一事が万事こんな具合で、なぜ改変したのか、おおよその事情はわかるけれど、改変した個所が微妙にズレている感じなんですよね。
 同じ中村義洋作品であれば、『アヒルと鴨のコインロッカー』が原作からの改変点がすべて腑に落ちるものばかりだったのに比べると雲泥の差ですね。

 まぁそんな感じで映画を観て原作の良さを再確認したのですが、原作と完全に切り離してみれば映画もさほど悪い出来ではないのかもしれません。
 自分にはそれは難しいですが。


 お気に入り度は★★★、お薦め度は★★★(★は五つで満点、☆は★の半分)。
コメント (4)
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