会いたい人と会うべき人がいる。
会いたい人には会うべきだと想う。
だから、会いたい人は、会うべき人・・・ということになる。
でも、会える人と会えない人がいる。
会いたい人に、会うべき人に、会えるとは限らない。
僕の旅は、そんな旅だ。
今回の僕の旅は、そんな旅だ。
四年前の北海道。羅臼から札幌へとタイヤ交換をしに向かう途中のこと。タイヤ交換をする必要があるほどに、僕のバイクのタイヤはすり減っていたわけで。でも、札幌まで余裕でたどり着けるはずたと思っていたわけで。
羅臼から札幌までの距離のほんの何分の一かを走っただけの、湧別町芭露の手前7キロ。
バイクが操縦不能になり路肩に停める。後ろに回ってタイヤを見ると、縦半分に裂けていた。俗にいうバーストというやつだ。
どういう計算で、札幌までたどり着けるとおもっていたのだろうか?
ボコボコしたタイヤで7キロ走った。時速3キロくらいのスピードで。うそ。ほんとは時速10キロくらいで。
たどり着いたのは芭露のガソリンスタンドだった。
よくよく考えると、無理してガソリンスタンドへ向かう必要は無かった。
携帯電話がある。今はそんな時代だ。
だがしかし、非常事態発生。その時には誰かに助けを求めたくなるじゃないか。
ガソリンスタンドに飛び込んで、
「タイヤがこんなんなっちゃったんです!」
と叫ぶのであった。
本当に、ガソリンスタンドの方々にはお世話になった。
みなさん、僕のために手を尽くして助けようとしてくれた。
居合わせたお客さんまで、親身になってくれた。
芭露の人は、みんないい人だ。
結局、僕のバイクはレッカー車で60キロも離れた北見のバイク屋へと運ばれた。
芭露では、どうすることも出来なかった。
翌年、僕は1ダースの栄養ドリンクを手土産に、芭蕉露のガソリンスタンドを訪れた。
「所長!その節はありがとうございました!これ、差し入れです!」
今年も来たのかぁ!と所長は喜んでくれた。
その次の年に事故に遭ったから、その時から三年が経つ。
所長に、会えるだろうか。。。会えるだろうか。。。会いたいなぁ。。。覚えていないかもしれないけど。。。
ガソリンは空っぽである。なぜなら、芭露のスタンドでいっぱいガソリンを入れてもらうためだ。
懐かしのスタンドである。
バイクを停める。おねーさんがガソリンを入れてくれる。
僕はキョロキョロと探す。
「あっ、いた!」
所長らしき人が、車の陰でお客さんと話している。
僕は外したガソリンキャップを手に持ったまま、所長ほ方へ。
「あの、、、四年くらい前に、、、タイヤが、、、バーストして、、、えっと、、、えっと、、、その時、、、助けてもらって、、、えっと、、、えっと、、、覚えて、、、」
所長は、こう言った。
「入ってきた時にすぐ分かったさ。そうだべなって。おっ、来たなってな。元気だったか?」
そこへ、おねーさんがガソリンを入れ終わって僕にカードのサインをもらいに来て、所長に言う。
「ん?所長の友だちかい?」
すると、所長が、
「友だちだべ。ほら、タイヤの、ほら、タイヤの」
すると、おねーさんが、
「あーー!あの時の!あー、友達だ!友達だ!」
事故のことを話したり、会いたかったことを話したり、今日のジェラートを食べる予定のことを話したり。
所長は、来年で何度目かの定年を迎えるらしく、もうガソリンスタンドの所長ではなくなってしまうらしく・・・
つまり、今年、ここに来なければ、もう所長には会えなかったわけで・・・。
良かった。所長に会えて。良かった。
会いたい人に、会える人もいる。会えない人もいる。
会いたい人に、会える時もある。会えない時もある。
僕は会いたい人に会えなくて泣き、会いたい人に会って泣く。
僕の旅は、そんな感じです。
そんな感じです。