僕が初めてカムイミンタラに来た頃、宮代さん曰く、「だいぶ旅人が減ってきていた時期でしたよね」、そんな頃だった。
宮代さんはここで25年、キャンプ場を営んでいる。その前にも長野でキャンプ場をやっていた。
キャンピングガイドに載っていた、廃校を改修したキャンプ場。数千坪の敷地。
北海道の旅、二回目。僕はドコドコと荷物満載のマグナちゃんに乗り、ここにやって来た。
宮代さんは、僕の姿を見てこう言った。
「久しぶりに、旅人らしい旅人が来ましたね」
この言葉が、どれほど僕の心に刺さったか。その後の僕の旅のスタイルにどれほど影響を与えたか。
僕自身の心の中にある定義。
「旅人らしい旅人」。
旅人らしい旅人でありたい。
今の旅人ライダーの主流は、バイクの後ろに大きなボックスを積む、というものである。
大きなボックスを2段、3段と積んで走る人も少なくない。
ボックスというのは便利である。雨に濡れない。積むのが容易。降ろせばテーブルになる(笑)。荷崩れし難い。便利なのである。
でも、僕はボックスを使わない。便利じゃなくてもいい。雨に濡れても仕方ない。だって、旅人だから。
新しいバイクを買い、旅のスタイルを考えていた。シャドウ専用の、両脇に付けるボックスが売っていた。
かっこいい。たくさん入る。雨に濡れない。便利。なのである。
迷った。ははは。相当迷った。「これ、いいんじゃないかな?」
でも、やめた。なぜか?
宮代さんの言葉が響いたのである。
「久しぶりに、旅人らしい旅人がやって来ましたね」
である。
それが・・・そんなわけのわからないモノが、僕の、旅人しての誇りだったりするのである。
その話をコデラーマンにしたら、こう言っていた。
「は?なんですかそれ?旅人らしくなくていいんですよ!ボックスにしなよ!」
はははははは。と、僕は笑った。
僕は、旅人でいたいのである。