ライオンの詩 ~sing's word & diary 2

~永遠に生きるつもりで僕は生きる~by sing 1.26.2012

羅臼の日記。おまけ3

2016-09-28 18:11:04 | Weblog


ガスバーナー事件の前夜のバーベキュー。
羅臼は大雨だった。

きたさんのブルーシートタープの下で、炭火焼。シャケを焼いたり、ホタテを焼いたり、カレイを焼いたり。

コデラーマンがなぜかきたさんの奴隷だという話は書いた。

タープの外は大雨である。バチバチバチと音を立てている。

きたさんが言う。

「こでらー、炭が足りんやん。車に載ってるから、あとで取ってきてや」

コデラーマンは「はい、あとで取ってきます」と答える。

外は大雨である。止む気配はない。バチンバチンとタープを打っている。

3分後。きたさんが言う。

「こでらー、車から炭取ってきてや」

雨がバチンバチンとタープを叩く。

い、今ですか?コデラーマン、驚く。

「今や、今行くんや!炭がなかなって火が消えてまうど!」

火鉢の中で、炭がメラメラと燃えている。まだ、大丈夫だと、誰もが思う。

「こでらー、行くんや!炭取って来い!ほれ、鍵や!車の鍵や!」

今じゃなくても・・・とつぶやきながら。
コデラーマン、雨の中を走る。


きたさんは、ゴミについてうるさい。いつも、ゴミについては非常にうるさい。

魚を捌いたりしたので、生ゴミが出た。ホタテの貝も出た。

きたさんは言う。

「こでらー、あとでこのゴミ、車の助手席の足元に置いてきてや」

コデラーマン、「はい、あとで置いてきます」と答える。

3分後。きたさんは言う。

「こでらー、車の鍵、持ってんやんな」

はい、持ってます。

「ゴミ、置いてきてや、今」

えっ?今ですか?今じゃなきゃダメなんですか?

「はよ行くんや!キタキツネに生ゴミ漁られるやんか!今や!今行くんや!」

非常に、きたさんが意地悪なように聞こえるが、わかんないけど、きたさんはいつもこうである。

炭とゴミにはうるさい。非常に、


カレイを食べたら、カレイの骨が出た。

「こでらー、このゴミ、車に置いてくるんや!」

えっ!!!?今ですか?

もういいっつーの。

延々と繰り返されるのである。

きたさんが起きている限り、続くのである。

僕はゴミ捨てを渋るコデラーマンに言う。

「行ってきいや。行ってこんと、出るで。出てしまうで。アマやで!尼崎やで!が出てまうど」


こんなにいじめられても、コデラーマンもきたさんのことが大好きである。と、思う。と、信じたい。

だって、わざわざ、きたさんに会いに羅臼まで行くんですから。

ほんまにおわりや!

羅臼の日記。おまけ2

2016-09-28 10:51:22 | Weblog


きたさんの奴隷1号はコデラーマン。きたさんの奴隷2号はナガイさん。

ナガイさんは、イクラをほぐしたあと、自分の宿へと帰って行った。雨の中。
なんのためにイクラをほぐしたのか?という話は前に書いた。

ナガイさんが帰ったあと、ナガイさんが居た場所にタバコとライターが置いてあった。

「あっ、ナガイさん、忘れてった!」

僕はきたさんにタバコとライターを渡す。もしかしたら明日取りに来るかもしれないから、きたさん、持っておいて。

「わかったわ」と、きたさんは自分の横のテーブルにタバコとライターを置く。

それからしばらくして。

きたさんがタバコを吸っている。そして言い放つ。

「ナガイさんのタバコ、吸ったったわ」

ナガイさんのタバコの煙をプハーっと吐き出す。

こわいこわいこわい。。。

そして僕とコデラーマンはお芝居に興じる。


明日、ナガイさんがやって来る。

あのぉ、昨日、ここにタバコとライターを忘れてしまったんですけど・・・。

「は?タバコ?タバコってなんや?」

いや、タバコを置いて帰ってしまって・・・

「は?タバコ?そんなもん知らんがな」

きたさんはタバコの煙をプハーっと吐き出す。もちろん、きたさんが吸っているタバコは、ナガイさんのタバコである。

こわいこわいこわい。。。

「なんや?わしがわれのタバコを取ったとでもいうんか?」

いや、そういうわけじゃないんですけど・・・あっ、そのタバコ・・・今お吸いになっているそのタバコ・・・

「なんや?わしがどこ出身か知ってんのんか?」

「アマやで。尼崎やで。アマやで。尼崎やで!なめとんか?」

こわいこわいこわい。。。

コデラーマンと僕の小芝居である。

「アマやで!尼崎やで!」は、お気に入りである。

小芝居を打つコデラーマンと僕を見ながら、きたさんは笑っている。
ナガイさんのタバコの煙を、プハーっと吐き出しながら。

こわいこわいこわい。。。


おわりや!

羅臼の日記。おまけ。

2016-09-28 10:26:24 | Weblog


羅臼には一泊しかしなかった。
工程上そういうことになった。
出来ることなら、もっともっと、きたさんと面白い時間を過ごしたいのだが、僕らは行かねばならない。
コデラーマンの休日は短い。

昨日漬けたイクラの試食である。

スプーン載せて食べる。旨い。ちょー旨い。

きたさんが「醤油が多めや!」とゴリ押ししてくるのを、「そやない!ミリンが多めや!」と、きたさんのミリンをドボドボと大量に入れたおかげで、しょっぱくない甘めのイクラに仕上がった。

きたさんも、イクラを一口食べ。

「旨いやんか」

と言っていた。

きたさんが言う。

「ご飯を炊いて、イクラ丼を食おうや」

コデラーマンと僕は、もう出発の準備をするのである。

「あぁ、米がないんや。昨日全部炊いてもうた」

そっかぁ、それは残念だよ。仕方ないよ。米がなきゃイクラ丼は食えないよ。

「しんぐさん、米ある?」

僕は首を横に振る。

「こでらー、米ある?」

コデラーマン、首を横に振る。

「せや、セイコマに買いに行こうや!」

コデラーマンと僕は顔を見合わせる。

いやぁ、そんな時間はないなぁ。

「は?何言うてんねん。セイコマやで?近いやん。行って帰って30分や」

違うよ、きたさん。

セイコーマートが近いのはわかっているよ。でも、違うんだよ。30分で帰ってきて、それから米炊いて、イクラ丼を食っていたら何時になんの?ということなんだよ。

そんなわけで、様々な引き止め工作を振り切って、僕らは羅臼を後にした。


二日後。コデラーマンと帯広で別れる。

別れ間際にコデラーマンが言う。

「あっ、そうだ!しんぐさん、米いりますか?」

ん?米?
米持ってないって言ったじゃん。

うけた。コデラーマン、うける。

「そりゃあ、米持ってないって言いますよ!あの時、米を持ってるなんて言ったら大変なことになったじゃないですか」

そう、僕も同じ。米を持っていた。あの時、米を持っているなんて言ったら大変なことになっていた。

以心伝心、というやつである。

もしかしたら、きたさんを前にすると、誰もが、以心伝心が出来るようになるのかもしれないね。

羅臼の日記。9

2016-09-28 09:58:43 | Weblog


結局、ガスはチョロチョロ〜としか出ないまま。
分解大作戦は終了。

もうそれは、ゴミである。
ガスの出ないガスバーナーなど、ゴミでしかない。

悲しいが、仕方ないのである。

きたさんは、なぜか、ゴミを組み立て始めた。

ゴミを組み立てる途中で、奴隷に、いや、コデラーマンに「こでらー、これつけてや」とか色々言いながら。

そして、ゴミを組み立てる途中で、力づくではめたりしているので、部品がぐにゃっと曲がってしまったりして、ゴミが、さらにゴミになったりして。ゴミのゴミ度がアップしたりして。

コデラーマンが、「そんなんなったら、もう絶対に保証の対象外ですよぉ〜」とか、言ったりして。

僕は、「それ、キツネ、食うかな?キツネにあげたら?」とか言ったりして。

組み立てが終わった。部品がグニャっと曲がっているから、ガスカートリッジがちゃんとはまってなかったりして。

きたさんが点火装置を押す。
普通ならカチッとなるのだが、ボコっと音がする。
点火装置も壊れた。

「しんぐさん、ライターや!ライターを貸すんや!」

僕はライターを差し出す。

ツマミを捻って、火を点ける。

・・・

なんと、なんと、なんと、
火が点いた。
普通に。
普通にというか、ちゃんと。

つまり、直った。

奇跡である。

一同驚愕である。

コデラーマンと僕は言う。

「奇跡や!奇跡が起きたんや!奇跡のきたさんや!奇跡のきたさんやで!」


おわり。

羅臼の日記。8

2016-09-28 09:34:00 | Weblog


きたさんの壊れたバーナーの話である。

きたさんは、ガスカートリッジを取り付ける部品にガスカートリッジを取り付けている。

ガスカートリッジを取り付けた先は、分解しているので、ない。
ガスの噴出ツマミを持ちながら、きたさんは言う。

「ここを捻ったら、危ないやんな」

まぁ、危ないというより、ガスが噴き出すわな。

コデラーマンが言う。

「そんなの、やめた方がいいですよぉ〜」

きたさんはニヤッと笑ってツマミを捻る。

すると、チョロチョロチョロチョロ〜とガスが出始める。
チョロチョロチョロチョロ〜としか、ガスが出ない。

そこや!そこがいかんのや!そこが詰まっとんのや!

僕はそなチョロチョロチョロチョロ〜具合がツボにはまって大爆笑中である。

「なにそのチョロチョロ!なにそのチョロチョロ!うけるんだけどぉ!チョロチョロ!チョロチョロ!チョロチョロ〜」

大爆笑中である。

きたさんはガスのカートリッジをブンブンと振り始める。ブンブンブンブン振り始める。

コデラーマン、逃げる。

僕は、きたさんに貸した工具を入れていた工具袋を膝の上に載せているため動けない。

その動けない僕に、きたさんが振り回すガスカートリッジから噴き出る液体ガスがバンバンかかる。

こいつはキチガイだ。と、僕は確信する。

コデラーマン、叫ぶ。

「かかってますよ!きたさん、ガスがしんぐさんにかかってますよ」

きたさん、振るのを止めない。

僕は言う。

「やめなさいっつーの。おまえはガステロリストか!」

そして、また笑う!

ガステロリストや!ガステロリストが出たでぇ!
出たんやでぇ!

羅臼の日記。7

2016-09-28 09:20:52 | Weblog


きたさんが、スキーウェアを着て、ニット帽まで被っているのは、ただ、寒いからだよ。

普通の人はそれほど寒くないのに、きたさんはスキーウェアを着て寝て、スキーウェア着て起きている。

分解の話である。

きたさんは僕に言う。

「しんぐさん、ビニールテープ持ってない?」

あるよ、と僕はビニールテープを差し出す。

ビニールテープをガスの吹き出し口の周りに巻いている。
それを見ている、僕とコデラーマン。

ビニールテープを巻き終わったその部品を、きたさんはジッと眺めている。
そして言う。

「こでらー、これ、口で吹いてや」

僕は、吹き出した。自分で吹けばいいやんか!

さすがのコデラーマンも驚く。自分で吹けばええやんか!

奴隷の反乱である。
さすがに、他人の泥だらけのガスバーナーの吹き出し口を拭くのは嫌みたいだ。そもそも、コデラーマンは潔癖気味である。

「きたさんが吹けばいいじゃないですか」

とコデラーマンは言う。
もっともである。至極もっともである。

仕方なくきたさんは吹く。ほっぺたを膨らませて思い切り吹く。

僕はカメラを構えて、
「きたさん!もう一回!吹いて!」
「きたさん!もう一回!違うよ!今!そう!今!」と、ゲラゲラ笑っている。

そもそも、ガスの噴出口というのは、ナノレベル小さな穴なので、人が思い切り息を入れようが、シューっと抜けるものではない。
だから、面白い。

「抜けへんな。全然ダメや」

羅臼の日記。6

2016-09-28 09:08:33 | Weblog


バーナーの分解をし始めたきたさん。

コデラーマンはそれを制止している。

「そんなことしたら保証が効かなくなりますよ!」

きたさんは分解を続ける。

「しんぐさん、ペンチ持ってない?」

あるよ。と、僕はレザーマンのペンチを差し出す。

「しんぐさん、8ミリのスパナ持ってない?」

あるよ。と僕は工具袋を開けてスパナを差し出す。

コデラーマンは言う。

「やめた方がいいですよぉ〜」

分解は続く。

きたさんは、バーナーとスパナをコデラーマンに差し出しながら言う。

「こでらー、これ、外してや」

コデラーマンはきたさんの奴隷なので、仕方なくボルトを外す。
外し終わってきたさんに返す。

きたさんは言う。

「こでらー、こっちのボルトも外してや」

コデラーマンはなぜかきたさんの奴隷なので、嫌々ながらボルトを外す。

ほぼ分解は終わった。

どこかで目詰まりをしているせいでガスが出ない。

次は、どこが詰まっているかを確かめる。


羅臼の日記。5

2016-09-28 08:38:36 | Weblog


羅臼の朝。

一人早起きの僕である。

一人でこっそりと珈琲を淹れようと思う。

自分のバーナーを出すのが面倒なので、きたさんのバーナーを勝手に借りる。

がしかし、火がつかない。何かコツでもあるのだろうか?何度やっても点かない、というよりはガスが出ない。
あまり強引にやって壊しても大変なので、あきらめて自分のバーナーでお湯を沸かした。

珈琲を飲み終わる頃、きたさんとコデラーマンが起きてきた。

きたさんがお湯を沸かそうとしている。

「そのバーナー、どうやって点けるの?さっきやったけど、点かなかったよ」

きたさんは言う。

「雨に濡れて、調子が悪いねん。弱火にしかならへんねん」

いやぁ、弱火にさえならなかったけどなぁ。

きたさんが、何かやっている。

やはり、弱火にさえならないみたいだ。

おもむろに、きたさんはバーナーを分解し始めた。

グッドモーニング斜里岳。

2016-09-28 07:26:06 | Weblog


登山をしてみたい。というよりは、斜里岳に登ってみたいとか、羅臼岳に登ってみたいだとか、知床に来るたびに思う。

だが、だが、実際に登る想定をして斜里岳を眺めてみると、「斜里岳・・・でかい・・・無理だ」と、普通に軟弱な精神で思うのである。

でも、夢は捨てない。

いつか登ってみせる。

待ってろよ、斜里岳。

いや、待ってなくても良い。

グッドモーニング斜里岳。

ホントに、待ってなくても良いよ。

グッドイブニングくりおね。

2016-09-28 00:19:09 | Weblog


クリオネに泊まっている大阪のおじちゃんが言っていた。

「ここは飯場やないねんからな」

クリオネは飯場化している。

今日の宿泊客の八割がジャガイモの仕事をしている。

つまり、ここはほぼほぼ飯場や。

夕方にドカドカと帰ってきて、飯食って喋って寝る!的な。

ライダーが少ない。
いや、みんなライダーなのだが、元はライダーなのだが、労働者化しているので、ここは飯場や。

みんな寝るのが早い。

つまんねぇの。と思っていたら、マスターが来て僕に言う。

「おい、英語喋れんのか?」

まぁまぁ喋れるかもね。と答えると、「ダベリ部屋だ!」と歩き出す。

クリオネにはダベリ部屋というものがある。

50歳以上の人はライダーハウスに入ってはいけないという賛否両論の厳格な決まりがあるクリオネ。

おじさんが来ると閉じ込める部屋がダベリ部屋だったりする。

そこでは飲み会が開かれていた。

イギリス人の女の子とフランス人の女の子。それを囲む会、みたいな。

よくわかんないけど、そこに放り込まれ、時を過ごす。

僕がクリオネに来ると、よくこういうことが起こる。

焼肉パーティだったり、誰かの誕生日の焼肉パーティだったり、なんかよくわからないけど焼肉パーティだったり。

いつもタダ飯を食わせてくれる。食わせてくれるというよりは、巡り合わせで食わせてもらっている。

マスターを嫌いな人がたくさんいる。なんか、すごく変わった人だから。

僕は、マスターが大好きである。だって、なんだか、すごく面白い人だから。

グッドイブニングくりおね。

久しぶりに日付が変わっても起きている。
外に出て、満天の星を見上げたら、スーッと星が流れて、少し得をした気分になった。