
ガスバーナー事件の前夜のバーベキュー。
羅臼は大雨だった。
きたさんのブルーシートタープの下で、炭火焼。シャケを焼いたり、ホタテを焼いたり、カレイを焼いたり。
コデラーマンがなぜかきたさんの奴隷だという話は書いた。
タープの外は大雨である。バチバチバチと音を立てている。
きたさんが言う。
「こでらー、炭が足りんやん。車に載ってるから、あとで取ってきてや」
コデラーマンは「はい、あとで取ってきます」と答える。
外は大雨である。止む気配はない。バチンバチンとタープを打っている。
3分後。きたさんが言う。
「こでらー、車から炭取ってきてや」
雨がバチンバチンとタープを叩く。
い、今ですか?コデラーマン、驚く。
「今や、今行くんや!炭がなかなって火が消えてまうど!」
火鉢の中で、炭がメラメラと燃えている。まだ、大丈夫だと、誰もが思う。
「こでらー、行くんや!炭取って来い!ほれ、鍵や!車の鍵や!」
今じゃなくても・・・とつぶやきながら。
コデラーマン、雨の中を走る。
きたさんは、ゴミについてうるさい。いつも、ゴミについては非常にうるさい。
魚を捌いたりしたので、生ゴミが出た。ホタテの貝も出た。
きたさんは言う。
「こでらー、あとでこのゴミ、車の助手席の足元に置いてきてや」
コデラーマン、「はい、あとで置いてきます」と答える。
3分後。きたさんは言う。
「こでらー、車の鍵、持ってんやんな」
はい、持ってます。
「ゴミ、置いてきてや、今」
えっ?今ですか?今じゃなきゃダメなんですか?
「はよ行くんや!キタキツネに生ゴミ漁られるやんか!今や!今行くんや!」
非常に、きたさんが意地悪なように聞こえるが、わかんないけど、きたさんはいつもこうである。
炭とゴミにはうるさい。非常に、
カレイを食べたら、カレイの骨が出た。
「こでらー、このゴミ、車に置いてくるんや!」
えっ!!!?今ですか?
もういいっつーの。
延々と繰り返されるのである。
きたさんが起きている限り、続くのである。
僕はゴミ捨てを渋るコデラーマンに言う。
「行ってきいや。行ってこんと、出るで。出てしまうで。アマやで!尼崎やで!が出てまうど」
こんなにいじめられても、コデラーマンもきたさんのことが大好きである。と、思う。と、信じたい。
だって、わざわざ、きたさんに会いに羅臼まで行くんですから。
ほんまにおわりや!