2月中旬、外は雪が降っている。亜衣の腹部は、妊娠5ヶ月で小さな生命の存在感が増している。3月で銀行を退社することがすでに決定していた。いよいよ、僕の収入で生活していかなければならない。こういうこともあろうかと、これまでも、生活費は僕の収入、そして亜衣の収入は貯金にまわしていた。出来るだけ、それを切り崩さないで自分が頑張らなければいけないと思っている。順調に行けば、夏に亜衣は子供を生み、僕は父親になるだろう。
その頃だった。高校時代の同級生のSから電話があった。都内の水族館で、藤沢と有紗を見たというのだ。Sは声をかけなかったという。
Sは恋人とデート中だったそうだが、館内はそれほど込み合っていなかったらしい。そこに長身の美男、美女のカップルが現れたから、自然とSの目は、水の中の生物からその二人へ移った。最初は気づかなかったが、よく見ると藤沢と有紗に似ていた。そして次第に似ているのではなく、本物だと思った。しかし、Sは声を掛けられなかった。2人の雰囲気、特に藤沢が大きく変質して見えた。溌剌としていたかつての面影がないのだ。そのため、やはり別人かもしれないかと迷いが生じた。しかし、水族館を出てしばらくして、やはり藤沢と有紗に間違いないと思い直したようなのだ。
その頃だった。高校時代の同級生のSから電話があった。都内の水族館で、藤沢と有紗を見たというのだ。Sは声をかけなかったという。
Sは恋人とデート中だったそうだが、館内はそれほど込み合っていなかったらしい。そこに長身の美男、美女のカップルが現れたから、自然とSの目は、水の中の生物からその二人へ移った。最初は気づかなかったが、よく見ると藤沢と有紗に似ていた。そして次第に似ているのではなく、本物だと思った。しかし、Sは声を掛けられなかった。2人の雰囲気、特に藤沢が大きく変質して見えた。溌剌としていたかつての面影がないのだ。そのため、やはり別人かもしれないかと迷いが生じた。しかし、水族館を出てしばらくして、やはり藤沢と有紗に間違いないと思い直したようなのだ。