スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

竜王戦&吉田のチルンハウス評

2024-11-29 18:59:48 | 将棋
 一昨日と昨日,和歌山城ホールで指された第37期竜王戦七番勝負第五局。
 藤井聡太竜王の先手。後手の佐々木勇気八段がなかなか態度を明示しませんでしたが,雁木になり,先手の早繰り銀。後手から攻めていく将棋になりました。
                    
 これは封じ手で,この手か☖4五角成の二者択一から選択された一手。先手は☗7九飛と逃げました。後手は☖4五角成でこれは銀取りなので先手は☗4六銀。今度は馬取りですから後手が☖4四馬と逃げました。今度は香取り。なので先手は☗7七銀と引きました。
 後手はかなり歩を損していますが,その代償に馬を作ったという局面。これがどうかというところ。
 ここから☖5四銀左☗3七桂☖8五桂と攻め合いに。銀取りなので先手は一旦は☗8八銀。後手は☖6五銀と繰り出しました。
                   
 ここから☗3四歩☖同馬☗1六角という順が厳しく,すでに後手が悪いようです。なので後手は先手が☗3七桂と跳ねてきたときに☖3六歩と打つ余地を残しておいた方が優りました。よって封じ手は☖4五角成の方がよかったということになるのではないでしょうか。
 藤井竜王が勝って3勝2敗。第六局は来月11日と12日に指される予定です。

 チルンハウスEhrenfried Walther von TschirnhausについてもステノNicola Stenoについても,僕はその生い立ちのようなものを示しましたし,スピノザとの関係がどのようなものであったのかということも示しています。そしてそのときに,人物評も書きました。ただ吉田の評価は僕の評価と異なったところがあるので,ここでそれを示しておくことにします。人物評というのは立場によって当然ながら変化するものですから,僕の評価だけを示しておくのはある点では不平等であるともいえるからです。
 もっとも吉田は,チルンハウスについてはそう多くを語っているわけではありません。そこで語られていることは,チルンハウスがスピノザの晩年の文通相手のひとりであったということと,スピノザが死んで半年ほどが経った後にローマに滞在していたとき,現地で近づいてきたステノに迂闊にもバチカン写本を見せ,そのまま巻き上げられてしまったということです。吉田はチルンハウスはスピノザの文通の相手としては哲学的な鋭さでトップクラスの人物であったけれど,人間的にはよくいえばオープンで,悪くいえば警戒心に欠如していたと,この一件から評しています。
 この吉田の評価の中には重要な点が含まれています。バチカン写本が出版されたときの解説の中には,チルンハウスはおとり捜査のような仕方でバチカン写本を巻き上げられたと書かれていると吉田はいっているわけですから,吉田の評価はこのことを前提としているわけです。したがっておとり捜査というのは,ステノがカトリックの信者であるということをチルンハウスが知っていたか知っていなかったということは別として,ローマを訪れたチルンハウスにステノが接近し,バチカン写本を読ませてもいい人物であるというようにチルンハウスに思い込ませたので,チルンハウスは実際にそうしたのであって,これも吉田のことばを借りていえば,その後に説教師であったステノが得意とする説得によって,チルンハウスがその説得に応じ,バチカン写本を巻き上げられたということになります。
 これが解説にある内容なのか,吉田が創作した物語であるかは分かりません。ただ,説得の部分はおそらくといっているので,吉田の見解です。
コメント
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